2009年5月7日(木)
 
再びコガネヌメリタケ
 
 連休中に福島県で採取したコガネヌメリタケを覗いてみた。やや乾燥気味で、ヒダの間には多数の虫が住み着いていた。柄は中空で、ヒダは上生から直生ないし湾生といったところか。ヒダの縁が濃黄橙色を帯びている(b)。胞子はアミロイド(c)。ヒダの縁を拡大してみると、濃色の表層がありそこから黄色いシスチジアらしきものが出ているのが見える(d)。
 ヒダを一枚切り出してスライドグラスに載せた(e)。カバーグラスをかぶせるときにいい加減においたため、ヒダの先の方にエアが入ってしまった。余計な空気を入れないためにも、やはり、カバーグラスの縁を封入液につけて柄付き針かピンセットなどで静かにかぶせる必要がある。
 紡錘形の黄色いシスチジアが縁と側に多数ある。ヒダ先端は横断面で半円形に膨らみ、そこに縁シスチジアが集中している(f)。昨年観察したコガネヌメリタケでは、ヒダ実質がいずれも逆散開型だったので、そのあたりを重点的に見ることにした(雑記2008.6.12)。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 粘液質のヒダを、実質部が分かるように切るのは思いの外難しい。粘性の強いヒダ実質がカミソリにまとわりつく。今回は主目的がヒダ実質の確認だったので、あきらめて多くのヒダを切ってみた。結局、複数のきのこから、計20枚ほどのヒダをチェックすることになった。
 20枚ほどのヒダのうち、15〜16枚は並列型だった(g)。しかし、4〜5枚のヒダでは逆散開型であった(h)。結果を振り返ると、一つのきのこの中に、並列型と逆散開型の両者が混じっていた。逆散開型には明瞭なものやら、緩やかに開き平行型との中間型を呈するものもある。当初、ヒダ横断面の写真を何枚も並べてみたが、いずれも似たようなものばかりなので、結局2枚だけをアップすることになった(g, h)。
 おざなりに、縁シスチジア(i)や担子器(j)、カサ表皮(k)なども撮影した。担子器はヌメリガサ属のように長く、カサ表皮の菌糸には多くのクランプがある(l)。

 このきのこ、ヒダやカサが強い粘性をもっているため、ピスに挟んで切るのが難しい。ピスに挟むとそのままゼラチン質の部分がピスの微孔に食い込んでしまい、せっかく切り出しても、スライドグラスに載せてピスを外す段階で形が崩れてしまう。でも今朝は、あえて5〜6枚ほど、ピスを使って切り出した(e, f)。ピス片を外すときに慎重にやれば結構うまくいく。
 粘性の強いきのこのヒダやカサを薄切りにするには、半乾燥ないし乾燥してしまい、それを切り出した方が楽だ。今朝は、大部分を実体鏡の下で切り出した(g)。スライドグラスに薄く水を張り、そこに寝かせたヒダを次々に切って、薄いものだけ残して他を捨ててからカバーグラスをかぶせた。カミソリがすぐに切れなくなる。もっぱら菜っ葉切り(=押し切り)で切片を作った。刺身切り(引き切り)をすると、ゼラチン質がズルズルと引きずられて、うまく切れなかった。


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