2010年7月13日(火)
 
胞子撮影で難儀 !!
 
 雑木林にヒカゲウラベニタケがよく出ている(a〜d)。イッポンシメジ科 Entolomataceae ヒカゲウラベニタケ属 Clitopilus に属するこのきのこの詳細は図鑑に任せるとして、特徴的で興味深いのが胞子の姿だ。保育社図鑑には、胞子は「楕円状紡錘形で6本の縦に走る肋状隆起があり,横断面は六角形」とある。ヒダは垂生で、菌糸にクランプはない。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 今回採取した個体では十分な胞子紋が落ちなかった。このため、胞子がいろいろな方向を向いて重なりあった画面は得られず、水(e)やメルツァー(f)で封入すると、ほとんどの胞子が側面を見せて横たわった。あまりに小さな胞子ゆえ、断面を切り出すことは一般的にはできない。
 では、「断面は六角形」を確認するにはどうしたらよいのだろう。胞子を立てて尖った部分を上か下にすればよいことになる。胞子の重心が偏っていれば楽にできるはずだが、ヒカゲウラベニタケの胞子ではうまくいかない。たっぷり多めの封入液に胞子を浮かせると、回転しながら転がっていく胞子がいくつもあって、その途中で六角形が見える。しかし撮影は困難となる。
 胞子が立った状態を固定しようと、グリセリンやらラクトフェノールで封入してみたがどうもうまくいかない(g)。ヒダを寝かせて担子器についた状態で撮影できれば正面観を撮影できるはずだ。ところがやってみると、ヒダが厚いため暗くてうまく撮影できない。やむなく、ヒダの一部を押し潰して、一定の厚みを持たせると、あちこちに立ち上がって六角形を見せている胞子をやっと捉えられた(h, i)。縁シスチジアの有無はよくわからない(k)。カサ表皮は細い菌糸が匍匐している(l)。

日( )
HOME