2014年11月4日(火) 胞子の怪?:ドクササコ
 先月南魚沼市のNさんからドクササコをいただいた(e, f)。2005年採取の標本(a)では胞子の姿で気になることがあった。しかしその後、なかなか自分たちだけでは採取できず、2011年になってようやく新潟産と兵庫産の標本をもらい受けた(b〜d)。
 Nさんからいただいた生標本と2005年、2011年の標本を比較しながら検鏡した。結果としてどの標本からもほぼ同一の結果を得た。ヒダにシスチジアはなく(g)、ヒダ実質は並列型で(h)、カサ表皮は匍匐気味に菌糸が絡み合い(i, j)、菌糸にはクランプがあり(k)、担子器はベーサルクランプをもったものが多かった(l)。生状態でも乾燥標本からの観察でも結果に変わりはなかった。

 問題の胞子だが、水やKOHなどで封入すると、保育社図鑑などに記されている通り「胞子は広楕円形〜卵形,3〜4×2.3〜3μm」(m)。ところがアミロイド反応を確認しようとメルツァー試薬で封入したとたんにおかしな現象に見舞われる。低倍率で見るとおよそ円滑な胞子とは言い難い姿がみえてくる(n)。油浸100倍レンズでみると胞子表面には微イボが見える(o)。ちなみに、胞子がメルツァー試薬で微イボを帯びるといった記述のある図鑑はみあたらない。
 2005年にはたまたま採取したドクササコだけに特異なものだと思っていた。次いで2011年にもらった子実体二つ(b)でも同じ現象を味わった。このときは、一部の子実体の胞子は水封状態でも微イボを確認できるものがあったが、撮影はしなかった。そこで今回はあらためてフロキシン(p)、コンゴーレッド(q)、コットンブルー(r)で封入してみた。結果としてどのケースでも胞子表面に微イボは確認できなかった。
 メルツァー試薬を構成するヨウ素、ヨウ化カリウム、抱水クロラールのいずれかの薬品が何らかの作用を及ぼしているのかもしれないが、これらの薬品は手元にはないので、個別に確認することはできなかった。時折、水道水で封入した場合にも胞子表面に微イボが見えることがあるので、上記薬品の作用ではないのかもしれない。
 

(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
 レイマーの顕微鏡専用撮影カメラは低倍率での走査線の写り込み(g, h, i, n)が避けられない。別途空(カラ)撮影をした画像などと併せて面倒な画像処理をすれば消すことは可能だが、それに要する手数と時間がバカバカしい。一年以上我慢してきたが、忍耐も限界に近づいてきた。


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