2016年2月12日(金) 橙色の小粒:何の子実体だろう
 落枝に橙色のやや硬い塊が多数着いていた(a)。ヒイロタケかヒメアカコブタケの幼菌のように見えたが、手にとってルーペで見るといずれでもない(b)。何かわからないがきのこの仲間だろうと思って持ち帰っていた。切断しても子実層らしきものが見当たらなかった(c, d)。
 子実体はいくつかが癒着しているようだが、基本的には長径が8〜12mmほどの豆粒状のようだ(c)。カバーグラスの上に数時間放置しておいたところ、胞子らしき物が多数落ちた(e)。メルツァー試薬で封入すると非アミロイドだった(f)。子実体を薄切りにして顕微鏡で見たが、やはり子実層はない(g)。子実体の基部付近には菌糸のようなものが放射状に伸びている(h)。
 改めて子実体の薄片を切り出してよく見れば、胞子状のものと菌糸状のものが放射状に整然と並んでいる(i)。さらにシンポデュロ型かポロ型のような分生子形成の構造も見えた(j)。胞子のように見えていたのは分生子らしい。硬質菌を観察するときのように子実体から微小部分をつまみ出してフロキシン・消しゴム法でバラすと、無数の分生子と隔壁を持った菌糸がみえる(k, l)。少なくともテレオモルフ(有性時代)のキノコではなさそうだ。

[補足:2016.2.13] これはかつて不完全菌類として扱われてきたTuberclaria属(和名なし)の子実体のようだ。この属は分生子座菌科の標準属とされ、果樹類の胴枯れを引き起こす菌らしい。テレオモルフは子嚢菌のNectria属菌で古くから植物病原菌として研究されてきた。林業関係者の間ではよく知られる病害菌らしい。神奈川のSさんからのご指摘でTuberclaria属だと気づいた。Sさんありがとうございます。
 

(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 昨日は終日快晴で山がとても鮮やかに見えていた。日中は気温もかなり上がって周辺の多くで雪が消えた。でも自宅前の市道は終日日陰のためか、いまだに雪と氷が歩行を邪魔している。玄関脇地所(万年不在?)の竹が自宅の側に大きく倒れて邪魔だったので切り除いた。


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