2016年4月15日(金) 今シーズンはじめての軟質菌の検鏡
 一昨日近くのシイタケほだ場で採取したPsathyrella(ナヨタケ属)のきのこ(a, b)を検鏡した。傘と柄をもったキノコを検鏡したのはたぶん今年に入って最初ではないだろうか。今年最初ということで念のために、観察過程をやや詳細に記しておくことにした。
 最初にシイタケほだ場で材がコナラであることを確認した。胞子紋をとる処置をして、傘や柄の肉眼的特徴を記し、それぞれのサイズを計測した後、傘から基部までを縦断した(c)。その頃には胞子紋が採れたので(d)、それを水道水(e)と濃硫酸(f)で封入して検鏡した(油浸100倍)。
 ついで、ヒダを一枚スライドグラスに乗せて(g)、生物顕微鏡で縁をみた(h, i)。縁シスチジアは嚢状やら紡錘形をしている(i)。次いで、ヒダ数枚をまとめて切り出し、キブシのピスに挟んで、ボルトナット簡易ミクロトームに挿入して切り出した(j)。側シスチジアがある(k, l)。
 その後、上述のボルトナットミクロトームを使って傘表皮を切り出した(m)。上表皮は細胞状をしている(n)。最後にヒダの縁を含めて2〜3mm四方ほどの小片をつまみ出して、フロキシンで染めたのち、3%KOHで封入して、カバーグラスの上から押しつぶした。これを油浸100倍レンズで確認して、縁シスチジア(o)、側シスチジア(p)、担子器(q)、クランプの有無(r)などを確認した。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
 上記の観察から分かったことをもとに図鑑やモノグラフにあたると、ナヨタケ属(Psathyrella)のイタチタケ亜属(Subgen. Drosophira)コナヨタケ節(Sect. Obtusatae)のキノコであると判明した。ついで、その節に含まれる国内産既知種にあたると、コナヨタケ(P. obtusata)ないしアシナガイタチタケ(P. spadiceogrisea)のいずれかに該当する。アシナガイタチタケのようだ。

 ふだんはこういった過程をいちいち撮影したりはしないので、短時間で検鏡結果はすぐにわかる。また、いちいち薄片を作ったりせずポイント部分だけを検鏡する。しかし、あらためてていねいに撮影してみると思いの外時間がかかった。今回はボルトナットミクロトームとキブシのピス、柄つきカミソリ、先細ピンセットを使って作業をした(小道具)。



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