ブナハリタケ Mycoleptodonoides aitchisonii

bunaharitake

 群馬県の奥利根地方に聳える上州武尊山はブナの原生林が広く残っている。特に南側の玉原高原、北側の田代湿原の周辺はうっそうとしたブナの原生林の中に遊歩道が整備されている。ブナに逢いたくなると玉原やら田代湿原によく行った。2時間足らずで行かれるブナの森は首都圏近くにはあまり無い。奥多摩の都民の森や丹沢山塊にもブナ原生林はあるが、川口市からは意外と遠い。何といっても首都圏の道路渋滞を覚悟しなくてはならないので、おのずと足は群馬県に向かってしまう。
 ブナの森はきのこが豊富である。なかでも群生して遠くまで独特の甘酸っぱい匂いを放つブナハリタケは古くから親しまれている。ブナの倒木さえあればかなり高い頻度で発生し、大量に採取できるので人気も高いきのこである。独特の歯ざわりと匂いのために調理には工夫がいるが、美味しいきのこである。
 上州武尊北面の田代湿原近くもその例に漏れず、ブナハリタケの宝庫である。正確には宝庫であった、というのがよいのかもしれない。自然を満喫できるようにと県が行った事業によって、周囲は遊歩道がすっかり整備され、上の林道も開放されてから久しい。以前はさほどの入山人口がなかったので、時期がくればブナハリタケの大群落がいたるところに見られた。ブナハリタケの群落を見ない秋は無かったし、採ろうと思えばいくらでも採れた。ちょっと歩けば、たちまちにナメコムキタケサンゴハリタケが採れた。
 林道の開放と遊歩道の整備がされてからは、これがすっかり様変わりしてしまった。奥利根方面の道路もすっかり整備されたので、ひっきりなしに人が訪れる。ナメコやムキタケ、ブナハリタケの宝庫としてもすっかり有名になり、乱獲が始まった。小さな幼菌のうちに大方のきのこは採取されてしまう。最近数年間は大きく育ったナメコには殆ど出会えなくなった。ブナハリタケも例外ではなく、人の手の届く高さにあるものは小さな幼菌のうちに根こそぎ採取されてしまう。地上5,6メートルほどの高さあたりにでているものでも、長い棒の先に鎌をつけた道具でやはり幼菌のうちに採取されている。
 上州武尊周辺のブナ原生林はとても気に入ったフィールドなので、毎年何度か足を運ぶ。しかし、ここ何年かは特有の甘酸っぱい香りにであうことは殆どない。まだ香りの弱い幼菌のうちに根こそぎ採取されてしまうからだろう。さびしいことだがこれが現実であろう。人々のきのこ熱が冷める日がくるまで、待つしかないのだろうか。(2002.12.22)

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