シイ、カシなどのブナ科樹木の根際に出る、と多くの図鑑類には記述されている。しかしこれまでカシから発生しているのを見たことは無い。是非とも一度カシからでるものにお目にかかりたい。若い樹木にでることは稀で、多くはスダジイの太い老木から出るようだ。また根際ばかりか地上10メートルもある高いところに大きな株が発生しているのを何度も見ている。多くは根際や足元くらいの高さに発生するようだ。
都心の神宮外苑球場の周りの何本ものスダジイからいくつも発生したことがある。球場を訪れる人の殆どはそんなことには一向に気づくことなくすぐ脇を通り過ぎていた。明治神宮、新宿外苑をはじめ、都内の古い神社仏閣、庭園、公園などの老木からもよく出るのだが、意外と知られていない。もっともこういう情報はあまり知られないほうがよいのかもしれない。
一種独特の趣をもったきのこだからだろう、たいていの人がこの名前は知っている。しかし、直接見たり触れたことのある人は思いのほか少ない。かつてきのこの会の幹事クラスの人から、カンゾウタケを見たことがない、一度発生しているところを自分の目で見てみたい、一度案内してもらえないだろうか、そういった話を密かに囁かれたことがある。彼には具体的な場所は教えず、都内や近郊の公園の名をいくつかあげて、スダジイの老木を探せばかなりの確率で見つかる旨を話して、案内云々はご遠慮いただいた。代わりに翌月の例会の場に、その日の早朝採取したばかりのカンゾウタケを持って参加した。
その色や形がヒトの肝臓を彷彿とさせるので、この名がついたのだろう。触ると手に赤い汁がつく。最近はカンゾウタケに出会ってもほとんど採取はしない。樹木についたままその場で小ぶりの切り身を切り出して生で食べてみる。純粋の生の刺身である。やや甘酸っぱい独特の味が舌一面に広がってくる。油を使った調理が思いのほか美味しいという友人もいるが、好きなのはやはりそのまま薄切りにした刺身だ。調味料はなにもいらないが、山葵醤油をつけて食べるのもオツなものだ。カンゾウタケのように全く生のままで食べられるきのこというものはとても少ない。他にそんな風にして食用になるきのこといったらヤニタケ、タマキクラゲ、ヒメキクラゲ、ハナビラニカワタケくらいしか知らない。(2002.12.22)
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2000/05/11 茨城県、大洋村にて |
2000/05/23 茨城県、大洋村にて |