きのこに関心を持つようになってまだ間もない頃、図鑑に非常に印象的な紫色のきのこが載っていた。当時はあまり深く考えていなかったのと、身近にそんなきのこに出会えるチャンスなどないと思っていたので、その名前すら忘れていた。ただ、その姿形だけは心にしっかりと焼き付けられていた。なんに寄らず紫色のきのこというものはとても印象的だ。
あるとき、きのこ狩りの帰り道にたまたま街道筋で屋台の前に車をとめた時のことだ。ホンシメジやコウタケ、ヤマブシタケなどと並んで、例の紫色の塊状のきのこが並んでいた。今では忘れてしまったが、面白い地方名がついていた。それはまがうことなくあの紫の印象的なきのこ、オオムラサキアンズタケだった。店員に話を聞くと、近くの山で取れたもので例年ほぼ同じ場所にでるとのことだった。具体的にどういうところに発生するのか尋ねたが、それには答えてもらえなかった。いつの日か自分の目でオオムラサキアンズタケが発生している姿を見たいと、真剣に思うようになったのはその頃からだった。何年間か捜し求めて歩いたが、なかなか出会うことはできなかった。その間にも他人が採取してきた個体はいくつも目にする機会があった。しかし、相変わらず自分たちだけで見つけることができないままに数年が経過した。
思いがけないところからよい知らせは入ってきた。親しいきのこ仲間の一人から具体的な発生場所を教えてもらうことができた。何とか日程をやりくりして早速行ってみると、その情報には間違いがなかった。このときは7〜9株ほどを見ることができた。嬉しいことに幼菌から老菌まで一通りそろってさえいた。当時は写真をとっていなかったので、その場でじっくりと観察した後、一株だけを持ち帰った。顕微鏡で観察した後、食べてみるとこれがまたとても美味しかった。姿ばかりではなく味もよいので、ますます気に入ってしまった。
この後も何ヶ所かで出会うことができたが、再びデジカメを使うようになり、あらためて写真を撮るようになってからは、なかなかよい姿の個体にであえない。最初に教えたもらった場所も最近ではほとんど姿を見ることができなくなってしまった。
このきのこは、図鑑などによれば雑木林に菌輪をなして発生するというが、大きな群をみたことはない。幼菌の時は鮮やかな紫色をしているが、成長につれて色が薄くなり老菌になるとほとんど薄茶褐色になってしまう。よく似たきのこにラッパタケがある。図鑑などによれば「(ラッパタケは)高さ15cmに達し、傘表面は汚黄色。子実層は平滑で、波状の縦ヒダは紫色で美しい。胞子は表面に細かいイボがある」という。しかし、肉眼で区別するのは非常に難しい。図鑑のなかにはこの両者を同一視、あるいは混同しているものが散見される。(2002.11.1)
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