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腹菌類(Gasteromycetes)における弾糸と偽弾糸の定義を簡単に整理してみると、おおむね次の様になるのだろう。重要なのはコットンブルーで染めた時の反応である。 ちなみに、capillitiumという語のcapillusは集合的に [毛] (hair)、-itiumは [帯びた、持った] (with, having) といった意味を添える語尾である。
今月21日、24日と観察したケシボウズの2種類の菌糸組織は、ちょっとみたところ薄膜の偽弾糸と厚壁の弾糸のようにみえるが、薄膜の菌糸はいずれも偽弾糸(paracapillitium)ではない。 コットンブルーはなかなか染まりにくいので、蒸発しないようにコップなどをかぶせて一昼夜放置するとか、ライターなどで煮えないように注意して熱を加える必要がある。 |
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一昨日の菌懇会ゼミで思いがけない、しかしいかにももっともな質問があった。「(腹菌類の)弾糸は胞子をはじき出す役割を果たしているのか」というものだった。また「偽弾糸と弾糸は何がどう違うのか、いったい何を基準に分けているのか」ということも話題となっていた。 確かにこういった疑問はいかにももっともだ。訳語が一人歩きして本来の意味合いと違ってしまうケースは他にもきっとかなりあるのだろう。慣例に従って使ってはいるが、腹菌類でしばしば使われる弾糸、偽弾糸という用語はこれまでもずっとあまり適切ではないと感じてきた。 弾糸capillitiumは細毛体とも訳される。一方、偽弾糸paracapillitiumは偽細毛体とか細毛様体とも訳される。では、capillitiumとparacapillitiumとは何を基準に区別されるのかというと、意外と知らずに使っている人が多いことに気づく。 でもこの概念をきちんと説明しようと思うと、菌糸型とかmiticシステムということに言及せざるを得ない。あわせて、cyanophilious(cyanophilic)という概念も説明しなくてはならない。この用語はアミロイドとか非アミロイドといった用語に比べると影が薄い。 高校やら大学教養で菌学の基礎教育が全く行われない日本では、自らその気になって基本を習得しようと考えない限り、常識的な基本概念は得られない。相手と同じ土俵で話をしているつもりで、その実、まったくかみ合わない議論をしていることはきっとかなり多いのだろう。 |
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