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■ 希菌 コナガエノアカカゴタケ Simblum sphaerocephalum Schl. |
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浅井 郁夫 (川口市) |
a | ここで取り上げるコナガエノアカカゴタケ(Simblum sphaerocephalum Schl.)については、未だ詳細にして十分な観察を経ていないので正確な報告はできないが、とりあえず現時点で記述できる範囲で報告したいと思う。昨年始めて出会ったばかりであり観察した個体数などもあまりにも少ないので、分布状態、発生時期、生態、何をエサにしているのかなど、未だ分からないことばかりである。今後も継続的に観察を続けていくなかで、これらが明らかになった時点で改めて発表したいと思う。
種の特徴の記述を坂本晴雄氏にお願いしたが、おおむね次のような特徴を備えている。スナジクズタケ、スナヤマチャワンタケなどと同様に砂地を好むという特性をもつ。発生の最盛期などについては未だよく分かっていない。
成菌4〜5, 老菌4〜5, タマゴ1など10数個体を採取. 生標本10数個 体は千葉県立中央博物館へ. 乾燥標 本2個体は吉見昭一先生へ ■ 2001/12/15 千葉県一ノ宮町海岸 同行の坂本晴雄氏が成菌1個体を採 取. 冷凍標本にして吉見昭一先生に送付→科学博物館へ ■ 2001/12/25 千葉県白子町海岸 成菌1個体、老菌数個体を採取. 生標本を吉見昭一先生に送付→科学博物館へ ■ 2002/1/8 千葉県一ノ宮町海岸および白子町海岸 成菌1個体, 老菌数個体を採取. 標本は自宅にて冷凍保存 ■ 2002/1/13 千葉県白子町海岸 成菌1個体, 老菌数個体を採取. 標本 は自宅にて冷凍保存
12月6日も一ノ宮町海岸の砂浜を歩いていたが、スナヤマチャワンタケやらスナジクズタケばかりで目的のきのこは見つからない。引き上げるつもりで最後にもう一度別の場所を歩いてみると、海辺の汀線に近いほとんど植物も生えていない砂の斜面に、砂まみれ状態でスッポンタケの頭部そっくりのきのこが出ている。それも強風と砂にほとんど被われてわずかに地表に顔を出しているだけなのでよくよく目を凝らして見ないと、そこに何かがあることすら気づきにくい。鼻を近づけて見るとスッポンタケ様の異臭を放っていた。このときてっきりアカダマスッポンタケ(Phallus hadriani)をみつけたのだと思いこんでしまった。この後、さらに数時間ほど探すと幾つもの個体がみつかった。 最終的に十数個の個体と新鮮なタマゴをひとつ採取して、そのまま千葉県立中央博物館に向かった。博物館で吹春俊光氏と歓談しながら「アカダマスッポンタケだろうと思う」と言って標本として預けて帰宅した。 帰宅して坂本晴雄氏に写真を添えて連絡をとると「アカダマスッポンタケではなくコナガエノアカカゴタケではあるまいか」とのことだった。坂本晴雄氏のアカダマスッポンタケにかける情熱は並大抵ではないので、この判断はかなり正鵠を得ていると思い、直ちに吉見昭一先生に連絡をとると、コナガエノアカカゴタケかもしれないので直ちに標本を送ってください、とのことだった。 この日採取した個体はほとんど千葉の博物館に置いてきたので、手元には2個体しかない。それも帰宅するとすぐに乾燥標本にしてしまったので生状態のものはなかった。やむなく乾燥標本2個体と撮影デ−タ(Fig.7,8)を吉見先生に送り、吹春俊光氏には「アカダマスッポンタケではなくコナガエノアカカゴタケらしい」と訂正のメ−ルを出しておいた。 数日して吉見先生から返事がきた。コナガエノアカカゴタケには間違いなさそうだが、さらに正確な観察をするためには頭部の網目などを観察できるような十分熟した個体などが必要であるという。 12月15日、25日の海岸行きは新たなサンプルを採取することが目的だった。そしてこの両日に採取した個体はその大部分を吉見先生に生状態・冷凍状態で送って見ていただいた。その結果2002年1月になってコナガエノアカカゴタケに間違いないとの回答をいただいた。なお、吉見先生の鑑定した標本は国立科学博物館に標本として収められることになるという。
Fig. 9 を見るとわかるように、白くて長い根状菌糸が砂中深く続いており、コウボウムギの腐朽した根やら腐朽材のようなものに繋がっていた。 胞子(Fig. 14)は無色の楕円形で5〜5.5×2.5〜3.5μm. 表面は平滑である。頭部の籠状部分を構成する細胞は大きな球形あるいは円柱形の構造をなしている。手元のサンプルからは担子器などを観察することはできなかった。 コナガエノアカカゴタケは色・形などにかなりの変異の幅があるようだ。これまで観察できたものだけでも、色々な姿を見せてくれた。特に柄の部分の赤みはかなり幅があるようだ。全体が真っ赤なものからわずかに上部だけ赤いものなどがあった。若い頃の頭部は一般にとても小さくて砂がこびりついているので、籠状の様子がなかなかわかりにくいが、十分成熟すると大きな籠状になり色も退色していく。 発生形態としては、単生するものから4,5本が群生するものまである。なかには3個体が根元でつながっているものもあった。 発生環境であるが、ほとんど植物の無いごくごく水際に近い砂の斜面に出るものやら、コウボウムギなどが疎に生える砂浜などに出るものまであった。ただ、海浜植物が密に発生するところではこれまで全く発生をみていない。 一般に砂上に姿を現している部分はとても少なくわずかに頭部と柄の上部を見せているケ−スが大部分であった。風や日差しの強い日などは発生から数時間ですっかりしおれて倒れてしまうようだ。直立した個体はほぼ共通して柄から上部の大半が砂に埋もれていた。強風の日などは萎れたり倒れた個体は数十分から1時間ほどで砂の下となってしまうことも確認できた。 今のところ千葉県九十九里浜でしか観察できなかったが、おそらく他の地域でも発生しているのでは無いかと思っている。晩秋から初冬がコナガエノアカカゴタケの最盛期だとしたら、この時期の砂浜をきのこを探して歩くなど普通の人はしない。だから知られていないだけなのかもしれない。よくよく観察したら少しも珍しいきのこではないのかもしれない、 ちょうどスナヤマチャワンタケのように。
(以下、同【文献】より) C.G.Lloyd. 1909. Phalloid. Kobayasi, Yoshio. 1938. Nova Flora Japonica, Hymenogastrineae et Phallineae. 川村清一. 1954. 原色日本菌類図鑑第6巻. W.C.Coker & J.N.Couch. 1928. The Gasteromycetes of the Eastern United States and Canada. Helen V.Smith & A.H.Smith. 1973. The Non-Grilled Fleshy Fungi
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(2002/01/10)