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2017年5月7日() 捨てる前にひと遊び:アシナガイタチタケ
 近くで採取したアシナガイタチタケを捨てる前に縦に切ったり横に切ったり、水泡を利用して胞子を並べたりして遊んだ。以下は例によってくだらない戯言だ。
 5〜6個のきのこがでていたが、比較的生状態といえるのは2本だけだった。ルーペで見ると、ヒダの大半は縁が折れたり虫に食われていた(c)。親ヒダはほとんど先端が崩れていたり欠けていたので、ヒダの断面や縁シスチジアの確認には小ヒダをつかった(雑記2017.5.7)。
 かなり乾いていたが胞子紋はたっぷり落ちた。湿らしたティッシュペーパを内側に張り付けたガラス容器をかぶせた効果があったようだ。いわゆるドライマウント、つまり封入液を使わずにカバーグラスをかぶせた状態で見た胞子(e)と5%KOHで封入した胞子(f)はかなり姿が違う。図鑑などに掲載されている胞子の形態は水やKOHで封入した状態だ。
 ナヨタケ属の仲間は濃硫酸で封入すると色が明瞭に変わる(g)。図鑑などには既に死後となった「スレート色」などと書かれている。さらに発芽孔があればたいていはその部分が膨潤して内容物の一部が今にも破裂しそうになって飛び出してくる。
 胞子や組織を封入するときには、封入液に空気が入らないように注意することになっている。逆にこの空気を利用するといろいろと面白いことができる。その一つ、胞子を並べることができる。水やKOHでは簡単に胞子が勝手に並んでくれるが(h)、濃硫酸のような粘性の高い封入液では難しい。その濃硫酸で無理やりやってみたが上手くいかなかった(i)。
 シスチジアを顕微鏡で覗くと無色透明に近いためコントラストが弱くて目が疲れたり、画像がはっきりしないことがままある。染色液で封入してモノクロ写真を撮る方法がある。染色液にはフロキシンがよく使われるが、コンゴーレッドも使われる。コットンブルーで封入すると形やサイズが大きく変わってしまう種もある。メルツァー試薬を使うとたいていはシスチジアなり胞子の内部が見えなくなる。サイズ計測にメルツァーやコットンブルーは不向きなのかもしれない。
 アシナガイタチタケは新鮮なものほど脆くて断面の切り出しが難しい。一方、半乾燥や乾燥させたものは断面の切り出しこそ楽だが、カサ表皮やヒダが潰れてしまっていることが多い。この場合は、封入液と封入時間に工夫が必要だ。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(e)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(a) 乾燥気味のきのこ、(b) カサと柄を縦切り、(c) ルーペで見たヒダ、(d) カサを横に切った、(e) 封入液なしの胞子、(f) KOHで封入した胞子、(g) 濃硫酸で封入した胞子、(h) 水泡を使って胞子を整列、(i) 濃硫酸を使って胞子を整列、(j) フロキシンで染めた縁シスチジア、(k) フロキシンで染めた側シスチジア、(l) カサの表皮