飽きずにまたカンムリタケを取り上げた(a)。というのも、図鑑類では意外と触れられていないことがいくつかあるからだ。採取から一週間、冷蔵庫に保管しておいたものは採取時と比較してずいぶん小さくなっている(b)。ここまで小さくなってしまうとは思わなかった。
たっぷり落ちた胞子紋を顕微鏡で見ると、大半は一細胞からなっている(c, d)。ところがよく見ると隔壁をもった胞子がわずかに混じる。『続原色日本菌類図鑑』では「胞子は円柱形,1〜2胞」(p.178)と表現している。コンゴーレッド(e)とフロキシン(f)で封入したもので、隔壁を持った(つまり2胞)の胞子を緑色の矢印で示した。水封のものでもよいのだが、たまたま画像(c)の中にはなかった。「キノコのフォトアルバム」のカンムリタケの「Photos of Microscopic Features」に掲載の胞子写真(2003.5.1撮影)にも隔壁のある胞子が見られる。隔壁のある胞子の存在比率は、100〜300個に一つくらいだった。未熟な胞子では気泡が隔壁のように見えることもある。
いまひとつ興味深いのは側糸の先端だ。子実層の断面を低倍率でみていると気が付きにくいが(g)、油浸対物100倍で見ると先端が黄色の微粒に包まれている(h)。メルツァー試薬で封入するとこの微粒もアミロイド反応を示す(j)。これまた低倍率ではわかりにくい(i)。全く意味はないが、側糸と子嚢を一本ずつメルツァー試薬で封入したものを掲げた(k, l)。
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