コケの間からちいさな目立ちにくいきのこがいくつか出ていた(a)。引っこ抜いて裏側を見ると、なんとも怪しい気配の色の柄とツバがある(b)。こんな色のツバと柄をもつきのこには、コレラタケなどの猛毒菌があるから要注意。もっともこんな汚らしい?きのこを食べようとは、普通の人は思わないだろう。でも世の中広いから、食欲を感じる人もいるのかもしれない。
胞子をKOHで封入してみると表面は疣におおわれて胞子盤がある(d)。水道水で封入すると、胞子の形がなんとなく違う。縦横比(Q比)も違って見える(e)。さらに封入液を変えると全く違ったきのこの胞子のようになった(f)。輪郭部に合焦したものだが、内部の油球こそみえるが、胞子盤は影も形もない。これだけみたら、ケコガサタケ属のきのこの胞子とはとても思えない。
このきのこの正体を見極めるべく、ヒダの断面を大雑把に切るとどうやらシスチジアがありそうだ(c)。そこでヒダを一枚寝かせて縁をみると(g)、確かにシスチジアがある(h)。改めてヒダ切片を作って(i)、先端周辺をみたがシスチジアの存在はわからない(j)。そこでヒダの一部をつまみ出してみると細長い薄膜のシスチジアが見えた(k)。菌糸にはクランプもある(l)。たぶんヒメアジロガサモドキなのだろう。それにしても胞子の封入液には要注意だ。
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