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2017年6月5日(月) なんだこのきのこは!? カサ表皮の謎
 先週、真岡市の井頭公園で落枝から小さなきのこが出ていた(a, b)。冷蔵庫に放置しておいた間にすっかり形が変わっていた(c, d)。当日胞子紋だけは取ってあったので、まずはそれを覗いてみた。対物40倍で見ると面白い形をしている(e)。この形、なんと表現したらよいのだろうか。油浸対物100倍にして(f)、改めてメルツァー試薬で封入した。弱いアミロイドだ(g)。
 カサの肉と上表皮との間はゼラチン質だ(h, i)。縁シスチジアらしき組織は飛んでいる人魂のような姿をしている(j, k)。担子器は細長いが特に特徴はない(l)。ゼラチン質の中の菌糸は細くクランプがある(r)。柄の上半部も表面がゼラチン質で覆われている。ちなみに水で封入したところ思うように展開してくれなかったので、すべてKOHを使っている。
 カサの断面を切り出して(m)、倍率を上げて上表皮(緑色枠の部分)を見ると、前述の胞子と同じような形の細胞で一面に覆われている。これはきっと隣接する子実体の胞子が貼りついたのだろうと思った。改めて、他の子実体のカサ部分の薄片を切り出した(o)。この緑枠部分を再び高倍率で見ると、やはり同じような細胞層とゼラチン質の菌糸しかみえない。手元のすべての子実体のカサ上表皮をあちこちから取り出しては高倍率で覗いてみた。どこも同じような姿がみえる(q)。さらにゼラチン質に邪魔されてなかなか鮮明な画像を得られない。
 これまでやってわかったことは、カサ肉のヒダに近い側は細長い菌糸が密に錯綜し、その上に厚いゼラチン質があり、上表皮に相当する部分は胞子と同じような形の細胞が密に層をなしていることだ。隣接する子実体が多量に胞子を散布してそれがゼラチン質のカサの上に厚く降り積もった可能性はある。もしそうだとすると、柄のゼラチン質には胞子がほとんどついていないのはどう説明するのか。別の理解の仕方として、カサ上表皮の構造が胞子と同じような形の細胞の層からなっている仮定することもできそうだ。そしてKOHで簡単にバラバラになってしまうと考えることもできる。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
 このきのこを再度採取していろいろ調べてみたいと思って、今日の午前中に再び井頭公園まで行ってみたが、園内はすっかり乾燥しきっていてきのこの姿は全くなかった。もちろん、このきのこを再度採取することはできなかった(6月5日 pm1:00 追記)。