先日奥日光の千手が原に群生していたチャワンタケの仲間を顕微鏡で覗いてみた。帰宅後すぐにカバーグラスに胞子紋をとっておいたので、まずはそのまま水道水で封入してみた。胞子は楕円形で、表面には疣のようなとぎれとぎれの網目のような凸凹があり、両端は厚めの膜に覆われたような形をしている(a, b)。コットンブルーで封入したり(e)、フロキシンで染めてもみた(f)。水封の場合よりややはっきりと胞子両端の厚ぼったくなった様子が分かる。
子実体のチャワン部分、つまり子実層と托の全体像を見ようと断面を切り出してみた。水分が多くとても厚いので、上(子実層)から下(托外皮)まで均一な厚さに切り出すのが難しい。子実体の内部、つまり随層や外皮層は円形菌組織や絡み合い菌組織など、いくつかの層からできている(g)。厚ぼったい理由は、たっぷり水分を含んだ円形菌組織の層が主たる理由のようだ。托外皮も円形菌組織や多角菌組織だ(i)。
メルツァー液に封入すると子嚢の上半がアミロイド反応を示す(h, j, k)。じっと見ていると時折子嚢の先端から胞子が飛び出すのが見られる。胞子を放出した後は蓋が開いたままとなる(k)。子実層には側糸がとても少ない(l)。場所によっては側糸がほとんどない。
|