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2019年6月1日() キコガサタケのように見えたが・・・
 昨日(5/31)に塩谷町の尚仁沢湧水群遊歩道で非常にやわで繊細なきのこに出会った。沢沿いの小径周辺にも関わらず他のきのこはほとんどなかった(雑記2019.6.1)。
 ちょっと見た目にはキコガサタケのように見えた(a, b)。しかし先入観と思い込みは禁物。たった一本だけしか出ていなかったので紙袋にいれて持ち帰った。帰宅後すぐにカバーグラス上に胞子紋をとった。1時間ほどして胞子を確認すると、Conocybe(コガサタケ属)によくある形をしている(c)。念のために濃硫酸で封入してみた。すると淡スレート色に変わった(d)。ということはこのきのこはConocybeではなくPsathyrella(ナヨタケ属)の可能性が大きいことになる。
 ヒダの縁をルーペで見ると白色でキラキラ輝いている。つまり透明で薄膜の丸みを帯びた縁シスチジアがある可能性が高い。そこで、ヒダを一枚スライドグラスに載せて縁を見た。縁シスチジアは薄膜で嚢状だ(e)。フロキシンを加えて軽く押しつぶしてみた(f)。
 ついでヒダの薄片を切り出してみると(h)、側シスチジアがあり(j)、嚢状の縁シスチジアもみえた(j)。なお、側シスチジアは多くがフラスコ型をしていた。一応カサ上表皮も確認すると、バルーンのような細胞が並んでいる(k, l)。カサ上表皮の中心部にも剛毛のようなものはない。
 全体の姿かたち、胞子紋の色、胞子の形と発芽孔、濃硫酸で封入時の胞子色の変化、シスチジアの形、カサ表皮の構造などから判断すると、どうやらコナヨタケ Psathyrella obtusata としてよさそうだ。持ち帰らずに先入観だけで判断したらキコガサタケにしていたところだった。やはり最低限、胞子と縁シスチジアだけは確認することが大切だ。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)