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落下胞子はすべて未成熟胞子だった | |||||||||||||||||||
7月29日に中禅寺湖畔にあるイタリア大使館 別荘記念公園(a)で採取したテングノメシガイの仲間(b)をルーペと顕微鏡を使って覗いてみた。 サイズは結構大きくて、歩きながらもコケの中から黒い棒状のものが見えた。頭部の子実層部分だけでも2.0〜2.5mmほどある(c)。ルーペで見ると子実層表面に細かな毛状のものがみえた(d)。頭部を縦断してみると、毛状のものは剛毛などではなく、子嚢が飛び出したものだとわかった(e)。 頭部を薄切りにして水封して顕微鏡でみると(f)、子嚢に入った細長い胞子が見える(g)。メルツァー試薬で封入すると子嚢先端が青変した(h)。3%KOHで前処理して封入すると胞子の水分がかなり抜けて凹みができた(i)。側糸は先端が丸く膨潤している(j)。 採取した直後に頭部を数時間ほどカバーグラスに載せると、沢山の胞子が落ちた(k)。ところが顕微鏡の倍率を一段上げると、胞子の中身がまるで空っぽのように見える(l)。さらに倍率を上げてみたが隔壁のできた胞子は一つもなく、いずれもすべてまだ細胞内容物の間に気泡ができているものばかりだった(m, n)。要するにすべて未成熟。 そこで、胞子紋から隔壁の数を見ることは諦めて、子実層の表面を剃刀で削いでこれを3%KOHで封入して押しつぶしてみた。すると成熟した胞子が多数見られた(o〜r)。いざ隔壁の数を数えてみると、7つから14までまちまちで、特定の数の隔壁をもったものが多いといった傾向は見られなかった。これをいまだ未成熟とみるべきか、隔壁の数はバラバラとみるべきか、どちらの判断も不適切とは言い難い。 |
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カミコン(亡妻)だったら、ここからが本番で、いろいろな文献にあたって種の同定作業にとりかかっていた。検鏡結果を研究ノートに書きだすまでは一日で終わっていたが、文献にあたって同定するまでには数日から数ヶ月かかっていたようだ。たいていラテン語やギリシア語の辞典に頻繁にあたったり、時にはイタリア語の辞書を紐解いたりしていた。今思えば、よくそこまでやったものだと感心したり呆れたりする。 自分としては種の同定はどうでもよいので、カミコンがやっていたような面倒な文献探索をするつもりは毛頭なく、サンプルも庭に廃棄処分した。最近は以前にも増して種の同定への関心は薄れている。 |
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