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 1999年の北海道はもっぱらきのこ行脚の楽しい旅行だった。佐藤清吉氏 (上川きのこ会長) と連れ立って大雪山系の銀泉台から赤岳に向かっていた。銀泉台にはシマリスが多い。ひまわりの実を見せるとたちまち10数匹が群がってくる。体の上に這い上がって餌を要求する。その姿が愛らしくて何度か、銀泉台には登ってしまった。
 大雪山系のきのこを調べ上げるのが佐藤氏のライフワークだ。この日は、ハツタケの仲間やチチタケの仲間が多かった。青空の下をきのこ観察をしながらのんびり登っていった。思いのほかきのこの種類の多いことに驚いた。
 這い松のように周りの樹木が低くなってきたあたりで、ふと左の樹木の幹を見ると、真っ白な花瓶のような形をした美しいきのこがあった。開いたチューリップのようでもあり、芸術的な姿にしばし足を止めることになった。枯れ枝やら倒木からではなく、まだ比較的若い樹木の幹の上側から生えていた。小さなきのこではあるが、背面は針状をなしているように見えた。周辺に仲間のきのこがないか丹念にさがしてみると、似通ったものがあった。一見肉薄のブナハリタケのような姿をしたものもあったが、ブナハリタケ固有の例の甘酸っぱい匂いはない。
 後日、佐藤氏からハリタケの仲間ではなさそうだ、という連絡をいただいた。そして大雪山系ではこのキノコをしばしば見るという。いまだ名無しのままのきのこである。
photo_top_sub01 ようやく探し当てた幼菌と思われるもの。傘の裏は網目のようにもみえるし、ハリのようにもみえた。ちょうどブナハリタケの薄めのものが1枚から数枚、樹木の根やら這い松の幹から発生しているかのような姿だった。匂いはまったくない。虫眼鏡でみても明らかにブナハリタケなどと全く別の種のようにおもわれる。(2000.11.20 記)