HOME | 観察覚書:INDEX | back |
[標本番号:No.6 採集日:2006/08/13 採集地:栃木県、日光市] [和名:ウロコミズゴケ 学名:Sphagnum squarrosum] | |||||||||||||
|
|||||||||||||
切片作りで実体鏡を使うことはなかった。小さなものを扱う場合、ルーペを手に持って切るか、ピスを用いることが多い。これまでは、このやり方でほとんど用が足りてきた。 先日鬼怒川遊歩道からミズゴケの仲間を持ち帰った。ミズゴケ類は同定の難しい仲間らしい。とにかく、ひたすら顕微鏡観察である。小さな葉の細胞やら、茎の表皮細胞を細かく観察しないと節レベルにすら到達できない。甘い見通しはたちまちうち砕かれた。 長さ1mmほどのミズゴケの葉を一枚(a)、ピンセットを使ってピスに挟んだ。目的は横断面での細胞の構造確認である。葉は一層の細胞からなり、厚みは15〜25μm。これより薄く切らねばならない(b)。切り出し幅が葉の厚みを越えていると、切片が倒れてしまい横断面の確認はできない。最初にふだんの要領で切り出すと、なんと50μmもの厚みがあった(c, d)。きのこの子実層托実質やシスチジアの観察であれば、この厚さに切れば充分である。 単体で断面を出すのは難しいので、複数の葉をピスに挟んで切った。これだと30μmほどの厚みがあっても何とか横断面を確認できる(e)。さらに薄切りにしたい。そこで、一枚だけをピスに挟んでヘッドルーペを被って切り出した(f)。15〜20μm厚、これならば、横断面での透明細胞と緑色細胞との配置などがよく分かる。ウロコミズゴケSphagnum squarrosumのようだ。 久しぶりに非常にシビアな切片切り出し作業となった。コケでの練習は、そのままきのこにも通用する。視力の低下を痛切に感じるこの頃、実体鏡下での切り出しを練習しなくてはなるまい。実体鏡下での切り出しは難しいが、慣れれば10μm以下に切るのもそう難しことではないという(保育社「原色日本蘚苔類図鑑」p.380)。
[修正と補足:2007.04.10] | |||||||||||||
|
|
||||||||||||
湿地に群生していた様子(a)、持ち帰って数日乾燥したときのもの(b)、それを水で戻した時のもの(c)、茎葉(d)、茎葉に見られる舷(e)、茎葉の葉身細胞(f)。さらに、枝葉(g)、乾燥標本からの枝葉の葉身細胞(h)、生の時に観察した枝葉の葉身細胞(i)、枝葉の横断面(j)、茎の横断面(k)、枝の横断面(l)である。以上すべて、昨年撮影した写真である。 | |||||||||||||