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[標本番号:No.14 採集日:2006/09/17 採集地:栃木県、日光市] [和名:ハミズゴケ 学名:Pogonatum spinulosum] | |||||||||||||||||||
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9月17日に栃木県川治温泉近くの鬼怒川遊歩道脇の斜面で、朔ばかりが目立つコケをみた。朔柄の基部には柄を包むように雌苞葉が見られたが(h)、朔自体は原糸体から直接直立しているように見えた(a, g)。興味深いので持ち帰ってきたが、しばらく忘れていた。 帽は白い毛に覆われ(b)、帽を外すと乾燥してシワのよった朔本体がでてきた(c)。充分成熟していないのか、蓋を取れるものが少ない。一部の蓋を無理矢理外すと、朔歯が現れた(d)。赤褐色の朔歯は一列で32枚の裂片からなり(e)、スギゴケ類の朔歯そのものである(f)。 雌苞葉は披針形で先端が尖り(i)、細胞は細長い矩形をしている(j)。中肋部は3〜4層で厚壁の細胞できているが、あまり分化は見られない(k)。葉の横断面をみると特にパピラなどはみられない(l)。朔の基部周辺に拡がる緑色の薄膜(g)は、やはり原糸体のようだ(m)。 朔の柄を切ってみると、4層からなっていて最外層のみが赤褐色をしている(n)。原糸体のところどころからでている微細な茎葉を調べてみた(o)。細長い針形の葉の縁には小さな歯があり、細胞は細長い矩形(p)。中肋は細く未分化の組織からなり、葉の細胞にもパピラのようなものはない(q)。茎の組織は中心部が大きな細胞で周辺部は細くて厚壁の細胞からなっている(r)。 スギゴケ類なら中肋部に薄板があるはずである。しかし、スギゴケ科でもハミズゴケには薄板は退化してみられないという。もし、ハミズゴケならば、朔の外壁に乳頭が有るはずである。そこで、朔を切断して、外皮を構成する細胞を見た。確かに乳頭がある。 どの属に落ちるのか皆目見当が付かず、かなり悪戦苦闘したが、どうやらこのコケは、ハミズゴケ Pogonatum spinulosum としてよさそうだ。身近にコケ仲間やコケに詳しい人物がいれば、検鏡するまでもなく、直ちにハミズゴケと指摘してくれたことだろう。 |
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