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[標本番号:No.19   採集日:2006/10/20   採集地:埼玉県、川口市]
[和名:ギンゴケ   学名:Bryum argenteum]
 
2006年10月20日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 自宅のある団地の屋上にはいろいろなコケが見られる。気にはなっていたが、身近なものほど分かりにくいのではあるまいかと思って、これまで全く手を出さなかった。今日初めてそのうちの一つを調べてみた。屋上のコンクリートの継ぎ目に出ていた小さなコケだ(a)。
 どうやら複数種が混在しているようなので、白緑色をして棒状のコケだけを持ち帰った(b)。このところの乾燥続きですっかり乾ききっているが、葉は縮れることなく覆瓦状に茎に密着して生え、葉の先端は白色の芒となっている(c)。水に浸しても葉は開くことはない(d)。
 一本の茎を取りだして顕微鏡でみた(e)。薄い葉がとても美しい。実体鏡の下で葉を何枚かバラしてみた。卵形で先端は急に細くなり鋭くとがっている(f)。葉の縁はなめらかで歯などはなく、中肋は先端少し下まで続いている。葉の先端細胞には葉緑体がなく、透明で壁が厚くなっている(g)。葉身細胞は不規則な六角形で、中肋の細胞は細長く厚壁である(h)。
 葉の横断切片を切り出そうとして難儀した。実体鏡の下で切ろうとすると、押さえがきかずとても難しい。何度も試みてやっと切り出すことができた(i)。同じことを実体鏡を使わずピスを使ってやってみた。はるかに薄い横断切片ができた(j)。中肋の構造も明瞭である。
 ついでに茎の先端付近の葉が密集している部分の横断切片も作ってみた(k)。写真(e)の黒っぽくみえる先端部である。これは、茎を指先で支えて切ったので割と楽に切ることができた。覆うように重なっているのは葉の横断面である。仮根は赤褐色で、細胞壁が斜めになっているのが興味深い(l)。どうやらギンゴケ Bryum argenteum らしい。