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[標本番号:No.19   採集日:2006/10/20   採集地:埼玉県、川口市]
[和名:ホソウリゴケ   学名:Brachymenium exile]
 
2006年10月25日(水)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 先日自宅団地屋上のコンクリートの隙間に出ていたコケをいくつか持ち帰った。その日調べたものはギンゴケだった。今日は、ギンゴケと混在していたコケを調べてみた(a)。ギンゴケとよく似ているが、乾燥しても銀白色にはならず、湿ると葉が茎から離れて開く(b)。
 何本かを取りだして乾燥状態(c)、湿らせた状態(d)を比べてみた。顕微鏡の低倍率で見ると、葉は卵形らしく、中肋は葉の先まで伸びている(e)。葉を一枚とりだした(f)。先端にはわずかに歯のついたものもあるが、ほぼ全縁である。葉先には、ギンゴケのような透明な細胞はない。
 舷はほとんど見られないが、舷もどきともいえる細胞をもった葉もある(j)。葉の縁の細胞は葉緑体が表裏に偏って配置されている(g)。葉身細胞は狭い菱形から六角形だが(h)、葉の基部では四角形になっている(k)。葉がとても小さいので横断切片の切り出しには難儀した。葉の厚みに対して、中肋部は意外と太い(i)。
 茎の根元の赤色部分の横断面を切ると、葉緑体のほとんどない葉も一緒に横断切片ができていた(l)。観察結果は、ホソウリゴケ Brachymenium exile を示唆している。それにしても、この小さな葉を切り出すのに、最初コケカッターを使ったが、どうあがいてもまともな横断切片を切り出すことができなかった。多分、不慣れと未熟さが原因なのだろう。結局、横断切片の切り出しは実体鏡を使わずに、ヤマブキのピスを用いて作成した。