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[標本番号:No.38 採集日:2006/11/20 採集地:愛知県、豊橋市] [和名:タチヒラゴケ 学名:Homaliadelphus targionianus] | |||||||||||||
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愛知県豊橋市の低山、薄暗い崖に這う苔類がやけに印象的だった(a)。岩の上を這う茎は両側に揃った葉をつけているが、片側から支枝を多数出していた(b, c)。ちょうど暖簾をかけた様な姿だ。枝葉は倒瓦状で、腹側にある赤みを帯びた多数の仮根で岩に付着している(c)。 岩上を這う茎は長く5〜10cmほどにもなり、ここから櫛の歯状に支枝をだしている。支枝の葉は卵形で、背片は基部で折れ曲がり小さな腹片となっている(d〜f)。葉身細胞は葉先付近では座布団型(g)、基部に近づくと細い菱形(h)、基部では細長い紡錘型(i)をしている。 茎の腹側からは赤褐色の仮根が多数出ている(j)。倍率を上げてみると、細胞壁が斜めについている(k)。仮根が細胞壁をもつということは、単細胞ではなく多細胞ということになる。苔類の仮根は単細胞と理解していたので、念のために仮根だけを外して、高倍率で見た。確かに細胞壁をもっている(l)。さらに、葉身細胞に油体がみつからない。あちこちの葉身細胞を高倍率で見たが、やはりそれらしき組織が見あたらない。それとも、3〜10ある緑色の塊が油体なのだろうか。何ヵ所か茎の横断面を切り出してみると、所々で組織が仮根に分化しているのがわかる。 さて、これはこれはケビラゴケ属でよいのだろうか。手がかりは、岩の上を主茎が這い、そこから櫛の歯状に支枝がつく。枝葉は倒瓦状につき、葉は全縁で卵形をしている。複葉はもたず腹片は小さい。葉身細胞は四角形から細長い紡錘形。油体が見られない。赤褐色の仮根は多細胞。 手元のいくつかの図鑑類に目を通したが、類似の苔類が見つからなかった。多分、知識不足のために属レベルまでしか落とすことができないのだろう。あるいはケビラゴケ属ではないのだろうか。今の実力ではこれ以上のことは分からない。 (am4:00記)
[修正と補足:2006.11.22 (am11:00)] |
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