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[標本番号:No.47 採集日:2006/12/10 採集地:埼玉県、名栗村] [和名:ヒラヤスデゴケ 学名:Frullania inflata] | |||||||||||||
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埼玉県名栗村の薄暗い杉林から持ち帰った苔類のうち最後のひとつを観察した。川沿いの薄暗いやや湿ったところに鍾乳洞がある。その入口近くの水の滴る石灰岩壁に着いていた。茎の長さ0.8〜1.2cm、幅は葉をいれて0.8〜1.2mmほど(a)。 表裏に扁平で先端がくちばし状の、軍配形をした花被がたくさんついている。この花被は袋状で、2〜3稜がある(c)。葉は重なり合って倒瓦状についている(a, b)。三角形から舌形をした腹片が上向きについている(d, f)。葉の付き方と開き具合が興味深い(e)。腹葉は茎の幅の1.0〜1.2倍で、長さの1/3〜1/2くらいまで2裂している(g, h)。 葉は卵形、全縁で、特に眼点細胞のようなものはみられない(i, j)。葉身細胞は400倍で見る限り、トリゴンはとても小さい(k)。しかし、1,000倍では、細胞壁は厚く、わずかに発達したトリゴンがみられる(l)。合焦位置をかえるとトリゴンはかなり大きく見える。 さてこの苔は何だろう。「倒瓦状」、「腹葉を持つ」、「花被が軍配形」というキーワードから、最も疑わしいのはヤスデゴケ科 Frullaniaceae ヤスデゴケ属 Frullania となる。平凡社の図鑑からヤスデゴケ属の検索表をたどってみた。素直にたどるとヒラヤスデゴケ Frullania inflata に落ちた。保育社の図鑑ではシノニムのマエバラヤスデゴケ Frullania maebarae として掲載されている。ただ、気になるのは、保育社の図鑑には「トリゴンは大きい」とあることだ。 |
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