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[標本番号:No.48 採集日:2006/11/19 採集地:静岡県、御前崎市] [和名:ゼニゴケ 学名:Marchantia polymorpha] | |||||||||||||
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11月19日に静岡県御前崎市の浜岡砂丘で海浜生きのこの調査をした。そのおりに、松林脇の池畔の砂地に出ていたゼニゴケ Marchantia polymorpha を採集した(a)。紙袋に入れ、冷蔵庫のきのこと同じ場所に放り込んでいてすっかり忘れていた。 今朝になって、紙袋の中身がきのこではなくコケであることがわかった。初心者にとってこれほど分かり易いコケは少ない。一面に雌器托をつけているので、すぐに雌株だと分かったが、11月に雌器托をつけていることに驚いた(b)。群落の縁には無性芽器が多数みられた(c)。 無性芽器をルーペでみると面白い。盃状で縁には歯があり、杯部分の細胞外面には小さなパピラがみられる(c〜e)。この無性芽器の姿は、きのこのチャダイゴケの仲間を連想させて面白い。チャダイゴケの場合は、中には碁石のようなペリジオールが入っている。一方、無性芽器には鼓形をした多細胞からなる無性芽が入っている(f, g)。 葉状体の背面は、多数のブロックに仕切られているが、そのブロック毎に、中央部に一つの丸い穴がある。穴の縁はまるで浮き輪を思わせる(h, i)。腹面を見ると、紫褐色の多数の仮根と透明な腹鱗片が見られる(j, k)。一部の腹鱗片は褐色をしている(l)。図鑑には約6列の腹鱗片があると記されているが、何列あるのかを確認することはできなかった。 |
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きのこでもそうだが、ありふれてあたりまえのものほど、観察しないまま、各部の構造をよく知らないケースがある。ゼニゴケなどは初心者でもすぐに同定できることから、観察も疎かになりがちな気がする。いろいろなコケを知るようになると、おそらくあらためてゼニゴケを詳しく観察することはあるまい。そう感じたので、やや細かく各部を観察してみることにした。 まずは、葉状体を横断面で切り出した(m)。背面には葉緑体の少ない1層の細胞が広がり、所々に気室がある。気室の上壁はこの1層の組織が被い、底には葉緑体を豊富にもった細胞からなる同化系がみられる(n, o)。気室孔はたる型をしている。 葉状体の腹面から仮根を取り外し、検鏡してみた(p)。有紋型と平滑形の仮根があることが分かる(q)。葉状体腹面の腹鱗片を構成する細胞には、葉緑体が見られない(r)。配偶体である葉状体の観察はこのあたりにして、次に葉状体から突出する雌器托を観察してみることにした。この部分の先端である雌器床に胞子体がついているはずである。 |
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最初に雌器托柄を横断面で切り出してみた(s)。均一な構造ではなく、片側に仮根溝が2つあり、その反対側には葉緑体を豊富にもった細胞が集中している。その緑濃い部分には、葉状体の背面と同じく、同化系が見られる(t)。仮根溝は何種類かの組織に分かれている(u)。 次に雌器托柄を縦断面で切り出したみた(v)。片側の同化系のある部分だけが緑色だ(w)。その他の部分の組織は、まるできのこの柄の菌糸組織を連想させる。仮根溝の部分をみると、葉状体の仮根と同じく有紋型の仮根が綺麗に並んでいる(x)。 どうせなら、雌器床の傘の骨のような部分も観察しておこう。まず、この部分の横断面を切り出してみた(y)。雌器托柄(s)とよく似た構造をしている。同化系のような組織もある(zb)。次にこの部分を縦断面で切り出してみた(z)。包膜や胞子体の一部なのか突出した構造がみられる(z)。紡錘形をした骨の先端の細胞には葉緑体は乏しい(za)。傘骨の中央部を縦断面でみると、この部分にも有紋型の仮根が多数走っていることがわかる(zc, zd)。
つい最近まで、ゼニゴケの雌器托全体を胞子体だとばかり思っていた。蘚類の朔柄とよく似ていることが、誤った理解を生んだのだろう。確かに同じ葉状体の苔類でも、フタマタゴケの仲間では朔柄は胞子体の一部である。茎葉体の苔類の朔柄も胞子体の一部らしい。 |
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