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[標本番号:No.58 採集日:2006/12/25 採集地:東京都、八王子市] [和名:オオバチョウチンゴケ 学名:Plagiomnium vesicatum] | |||||||||||||
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昨年12月25日に東京の高尾山で採集したコケがまだいくつか残っている。このうちのひとつ、暗い沢床の腐木から出ていたコケを観察した(a)。腐木から地面を這い、わずかに立ち上がり気味になり、茎の両側に丸い葉を広げている(b)。乾くと強く縮れる(c)。 ルーペで見ると太くてしっかりした中肋が葉先近くまで伸び、葉は茎にしっかりついている(d)。茎には丈夫な赤褐色の太い仮根と、色の薄い細長い仮根がついている。葉を茎からはずしてみた(e, f)。葉長は2〜4mmほどある。全縁で全周にわたって細長い細胞からなる舷がある(g)。舷は葉先にもあり、葉頂は短く尖っている(h)。 葉身細胞は丸みを帯びた長めの六角形で、 生殖器官をつけた茎が見つからなかったが、ツルチョウチンゴケ属の蘚だろう。検索表にあたると、ツルチョウチンゴケ Plagiomnium maximoviczii が最も近い。記載を読むと、どうやらツルチョウチンゴケとしてよいのではないかと思う。
[修正と補足:2007.1.3 pm6:15] [修正と補足:2007.1.29] |
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ツルチョウチンゴケとしていたが、オオバチョウチンゴケ Plagiomnium vesicatum と修正する。たまたま、数日前にツルチョウチンゴケと思われるものを採取した。これと比較して、葉の横断面や葉身細胞の大きさがあまりにも違う。そこで、再び標本に戻って再度検鏡してみた。その結果、1月3日の記述に大きな誤りがあることが判明した。 葉身細胞の写真(g〜i)であるが、これを400倍だとばかり思いこんでいたが、正しくは200倍であった。あらためて400倍で撮影したものをアップした(n, o, q)。葉身細胞の大きさは、30〜90μmであり、正規分布をみると、60μmあたりを中心に左右に広がっている。また、中肋付近に大きな葉身細胞があるわけでもなかった(m, o)。 あらためて、中肋付近と舷の部分の横断面の写真を掲載することにした(q, r)。再度標本にあたって検証した結果は以下の通りだった。葉には横シワがなく、かなり丸みが強い。葉身細胞のサイズがツルチョウチンゴケと比較してあまりにも大きい。中肋付近に大きな細胞があるとはいえない。したがって、これはオオバチョウチンゴケとするのが正しいと思われる。 |
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