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[標本番号:No.77 採集日:2007/01/19 採集地:東京都、渋谷区] [和名:アカイチイゴケ 学名:Pseudotaxiphyllum pohliaecarpum] | |||||||||||||
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去る1月19日、明治神宮の参道脇で樹の根本にツヤのあるコケが目立った(a)。茎は這い、長さ1.5〜3.5cm、幅は1〜1.5mm、不規則に羽状に枝分かれする。葉は扁平につき、乾いてもあまり姿は変わらない(b, c)。葉の付け根を見ると独特の形の無性芽がついている(d, e)。それぞれは、長さ300〜800μm、幅25〜35μmで、おしぼりを絞ったような姿をしている(f)。 葉は長さ1〜1.2mm、卵形で多くは非相称、先端が軽く尖り、葉縁には小さな歯がある。中肋は不明瞭だったり、短くはっきりしないものが二叉している(g, h)。わずかに、一本がやや太く明瞭で、もう一本が目立たず、やや相称気味の葉もある(g)。 葉身細胞は葉頂付近では紡錘形(i)、葉の大部分は線形(j)、翼部では薄膜でやや小さく(k)、どの部分にもパピラのようなものはない。茎の横断面を見ると、表皮細胞は厚壁で小さく(l)、茎には毛葉などはなく(d, e)、葉の基部に仮根が多数ついたものもある。 保育社の図鑑と平凡社の図鑑をたどると、どうやらアカイチイゴケ属 Pseudotaxiphyllum らしい。特徴的な無性芽を持つことから、アカイチイゴケ Pseudotaxiphyllum pohliaecarpum の可能性が高い。コケ本体が紅色にならないので、もしかしたら、ヒダハイチイゴケ P. densum の可能性もある。ただ、ヒダハイチイゴケの無性芽の記述を読むとちょっと違うような気がする。 ちなみに、昨日(1月24日)富山市内の小丘の斜面で紅色に色づいた典型的なアカイチイゴケにであったが、これは、苔類と渾然一体に生育していた。ここで見た標本と富山のアカイチイゴケとは、ミクロの姿にほとんど差異がない。 今日観察したアカイチイゴケは紅色にならないタイプなのだろうか。あるいは、もっと寒くなったら一部が紅色になるのだろうか。そのうちに、再び明治神宮に行ってみれば何らかの変化を見ることができるかもしれない。 |
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