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[標本番号:No.80 採集日:2007/01/24 採集地:富山県、富山市] [和名:フソウツキヌキゴケ 学名:Calypogeia japonica] | |||||||
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一昨日富山市内の小高い丘の中腹で何種類かコケを採取した。アカイチイゴケとなど混生して出ていた苔類を調べてみた(a, b)。北側の湿った斜面の土の上に、広くベッタリと着いていた。茎は長さ8〜12mm、幅0.8〜1.0mmでわずかに分岐する。葉は重なって斜め倒瓦状に着く。 葉は舌形〜卵形で円頭だが、まれにわずかに二裂するものがある(c)。腹片はない。葉身細胞は5〜6角形で、トリゴンはほとんどなく、表面は平滑、油体は各細胞に2〜4個ほどあり、長楕円形〜米粒形で小さな粒子の集合にも見える(d)。腹葉は離在し、茎幅の1.5倍ほどで、1/3くらいまで二裂し縁は全縁である(e, f)。 葉の形が卵型、葉の付き方は倒瓦状、腹片がなく、小さな腹葉をもつことなどから、ツキヌキゴケ科 Calypogeiaceae と検討をつけた。科の検索表からツキヌキゴケ属 Calypogeia に落ちる。ツキヌキゴケ属の検索表をたどると、ホラゴケモドキあるいはツキヌキゴケが近い。 しかし、ホラゴケモドキは青色で房状の油体を持ち、植物体先端で青みが強いとされる。また、ツキヌキゴケは亜高山帯以上の腐植土か倒木上にでるとされる。ホラゴケモドキのように思えるのだが、青色の油体が見つからない。現時点では、ツキヌキゴケ属としておこう。
[修正と補足:2007.1.26] | |||||||
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そこで、あらためて再度標本にあたり、葉身細胞中の油体だけにポイントを絞って検鏡した(g〜i)。10〜12μmほどの長さの油体の中央に、径3〜3.5μmほどの丸い組織がある。これを主要な分類形質と考えると、フソウツキヌキゴケ Calypogeia japonica とするのが妥当だ。 はじめに種の検索をしたとき、「眼点」という表現に突き当たったが、これを「眼点細胞(ocellus)」の意味で捉えていた。このため、フソウツキヌキゴケは非該当種と考えた。しかし、図鑑では、油体の中にある丸い大きな組織を「(大)眼点」と表現している。これは思い込みによる読み間違いだったことになる。 | |||||||