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[標本番号:No.100 採集日:2007/02/11 採集地:静岡県、川根本町] [和名:コウヤノマンネングサ 学名:Climacium japonicum] | |||||||||||||||||||
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2月11日静岡県寸又峡温泉の吊り橋近くの斜面に大型で見栄えのよいコケが生えていた(a)。乾燥しているため葉は覆瓦状に茎に密着しているが、大形で樹木のような雰囲気を醸し出している(b)。近づいてルーペでみると、端正な枝がスラッと伸びている。掘り出してみると、地下には丈夫でしっかりした一次茎がはい、そこから仮軸分枝して、二次茎が立ち上がっている(e)。 二次茎は高さ5〜8cm、上半部で羽状に枝を出し、主枝は3〜5cm、さらに、主枝から羽状に長さ2〜3cm支枝を出し、全体は樹枝状に拡がる(f)。葉は、乾燥状態では茎に密着して覆瓦状になっているが(c)、湿ったときには茎から離れて拡がる(d)。 茎葉は、直立した二次茎の下部では鱗片状に茎に密着してつき、褐色で卵形だが、茎上部では、緑色で先端がやや尖り(g)、葉頂部に小さな歯をつけたものもある。横断面を切り出してみると、縦の皺が反映された形となった(h)。茎葉の葉身細胞は、先端付近では丸みを帯びた菱形(i)、葉の大半では線形(j)、葉の基部では幅が広くなっている(k)。二次茎の横断面を見ると、表層の細胞は厚壁で小さく、内部の細胞は薄壁の細胞からなり、中心束などは見られない(l)。 枝は縦ヒダのある幅広い基部から狭い三角形〜披針形で、長さ1.5〜2.5mm(m)、葉縁には先端から中程にかけて大きな歯がある(n〜p)。中肋は葉頂近くまで達し、背面に数個の大きな歯をもっている(n)。葉身細胞は先端(o)、中程の縁周辺(p)、葉の基部(q)で形が違い、茎葉と似たような傾向をもつ。基部の細胞は茎葉と比較するとずっと小さい(k, q)。主枝の横断面には、小さな毛葉のようなものが多数ついている(r)。 コウヤノマンネングサ科には間違いない。茎の表面に薄板がなく、枝に毛葉が多数つき、枝葉の中肋背面に顕著な歯をつけていることから、コウヤノマンネングサ Climacium japonicum だろう。初めて出会ったが、まるでシダを思わせる。コケの女王といった風格がある。 |
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