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[標本番号:No.119 採集日:2007/02/25 採集地:栃木県、栃木市] [和名:ネズミノオゴケ 学名:Myuroclada maximowiczii] | |||||||||||||||||||
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石灰岩地の林道脇の岩壁を特徴的な姿のコケが覆っていた(a)。全体的にかなりツヤがあり、横にはう茎から不規則に短い枝をだし、丸っころい茎が少し立ち上がり気味に垂れ下がっている(b)。ちょっとみただけでも、葉の付き方が非常に特徴的だ。 茎には、仮根と一緒に枝葉とは違った形の葉が疎らについている(c〜e)。枝の長さは2〜4cm、葉は強く重なり合って枝に密着してついている(b〜e)。枝葉は乾いていても(c)、濡れていても姿はほとんど変わらない。丸い茎は先の方で小さく細くなり、ネズミの尻尾を思わせる。 最初に横にはう茎についた葉をみた(f)。広卵状披針形で葉先は鋭く尖り、先端付近には微細な葉がある(g)。中肋は中程まで延びる。茎葉の葉身細胞は先端から基部ちかくまで、細長い紡錘形〜線形で(g, h)、翼部では丸みを帯びた矩形となる(i)。 枝葉は茎葉とは全く異なり、伏せたお椀の様な形をしている(j, k)。球形を半分に割ったような姿をしていて、葉先がわずかに微突出し、非常に微細な歯をもっている(l)。一本の中肋が葉長の2/3あたりまで伸びている。 枝葉は、深い凹みをもった半球形のため、顕微鏡下にもってきてカバーグラスをかけると、潰れたり破れたりで明瞭な姿の影像を得ることはできなかった。枝葉の葉身細胞は、茎葉のそれとはやや異なり、菱形から長めの多角形で(l, m)、長さ10〜30μm、幅8〜10μm、翼部では矩形のものが増える(n)。 茎の断面をみると、表皮細胞は厚壁の小さな細胞からなり、中心束がみられる(o)。枝は半球形をしているため、横断面の切り出しは非常に面倒だ。何とか中肋を含む部分とその先の部分を切り出した(p, q)。なお、無性芽のような組織がいくつもみられた(r)。 この特徴的な枝ぶりと枝葉の形から、ネズミノオゴケ Myuroclada maximowiczii に間違い無かろう。それにしても、茎葉と枝葉が、あまりにも違うことに驚いた。 |
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