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[標本番号:No.132 採集日:2007/03/04 採集地:群馬県、神流町] [和名:ケギボウシゴケ 学名:Grimmia pilifera] | ||||||||||||||||||
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群馬県神流町の山中にある福寿草自生地への斜面で、陽当たりのよい斜面の転石に黒緑色のコケがたくさん着いていた(a)。この仲間には何度も出会っているが、これまで持ち帰ったことはなかった。よく見ると葉の中に沈み込むように赤色の朔をつけている(b)。 茎は長さ1.5〜2.5cmで、硬くて簡単に折れそうな印象をうける。乾燥すると葉は茎に接し(c)、湿ると広く開出する(d)。葉先からは長い白毛がでているようにみえる(b)。室内で撮影すると、白毛の部分が白飛びして上手く写っていない(c, d)。 葉は広めの基部から披針形に伸び、先端は鋭い歯を持った透明な針状になっている(e〜g)。長さ3〜4mmで、中肋が葉頂まで伸びている。葉の基部は鞘となり、顕微鏡で覗こうとカバーグラスをかけると折れ曲がったり、簡単に破れてしまう(f)。 葉の横断面を切り出してみた。葉の先の方では、竜骨状になり、葉の縁は2細胞からなり(h)、葉の中程では中肋にステライドがみられ縁は半曲し(i)、葉の基部では中肋は扁平となり縁は1層の細胞からなる(j)。茎を切り出したとき、図らず半曲する縁がみえた(m)。 葉身細胞は幅8〜10μmの方形の細胞からなり、波状に肥厚した細胞膜をもつ(k)。葉の鞘部では長い矩形の細胞となり、細胞膜もやや薄目である(l)。茎の断面をみると、表皮細胞は厚壁の小さな細胞、内部は厚壁のやや大きな細胞からなり、中心束のようなものはみられない。 朔柄はとても短く(o)、朔は雌苞葉の間に沈み込んでいる(n)。朔歯は16枚で、上半部にはいくつかの穴がみられる(q)。多くの蘚類がそうだが、朔歯は湿ると閉じ、乾燥すると開く(p)。実体鏡の下で息を吹きかけると朔歯の運動がみられて興味深い(p)。 さてこの蘚類だが、ギボウシゴケ属であることは間違いないだろう。ギボウシゴケとするかケギボウシゴケとするか迷った。分枝が非常に少なく、葉先の白毛部分が長く、日向の花崗岩質の岩についていたこと、葉縁の下部が半曲していること、などからケギボウシゴケ Grimmia pilifera と判断した。 |
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