HOME  観察覚書:INDEX back


[標本番号:No.138   採集日:2007/03/10   採集地:山梨県、道志村]
[和名:ハイゴケ   学名:Hypnum plumaeforme]
 
2007年3月16日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 これまで、ハイゴケというと土の上に出るものしか見たことがなかった。図鑑には石上にも群生するとあるが、これまで石の上に出た姿を見たことはなかった。昨年7月にコケに関わるようになってからは、意識的に石や岩の上に出るハイゴケに注意を払ってきた。
 ここ数ヶ月の間にも、何度もハイゴケらしいコケが石に着いている姿をみたが、持ち帰って調べてみることはしなかった。先週土曜日に山梨県の道志村で、沢沿いの岩壁一面に厚いマットを作ってハイゴケらしき蘚が着いていた(a, b)。確認のために持ち帰った。
 群は黄緑色の柔らかい感触のマットを構成しているが、それぞれの茎は水平からやや斜上する枝をのばし、規則的に羽状に分枝している(b)。個々の枝をバラバラにしてみると、羽状の枝をつけた茎は5〜15cmにも及ぶ(c)。
 ルーペで茎や枝をみると、毛葉などはまったくない。茎葉は枝葉と同じような形をしていて、枝葉より少し大きめである(d〜f)。茎葉(e)も枝葉(f)も共に、先が鎌状に曲がり、二叉して短い中肋がある。葉の先端部には小さな歯がある(g)。
 葉身細胞は線形で、先端と基部ではやや幅広になり(g, i)、葉の中央部では細くなっている(h)。葉の中央部をみると、幅3〜5μm、長さ40〜65μmだが、葉先や基部では、幅が4〜7μmとなっている。翼部はよく発達し大きな矩形の細胞からなり、他の部分とは明瞭に異なる(i)。
 茎の横断面をみると表皮細胞は厚膜で小形である(j)。観察結果から、どうやらこのこけは予測通りハイゴケ Hypnum plumaeforme としてよさそうだ。となると、1月ころから岩壁にみたこけで、ハイゴケのように見えたものも、ハイゴケだったのかもしれない。

 ハイゴケの葉の横断面切り出しは難しい。以前試みた時も上手くできなかった(覚書2007.2.18同2006.11.18)。何度か数枚の葉をまとめて切り出したが、なかなか面をきちんと出すことができない。7〜8回切り出しをして、なんとか基部近く(k)とその少し上(l)の面を切り出すことができた。しかし、やはりかなり厚みがあるので、焦点がきちんと定まらない。