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[標本番号:No.140   採集日:2007/03/10   採集地:山梨県、道志村]
[和名:ハリガネゴケ   学名:Bryum capillare]
 
2007年3月18日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 山梨県道志山地(標高950m)で古いコンクリートの堰堤上を、鮮やかなコケが厚いマット状に被っていた(a, b)。明緑色の中に赤褐色の群が混じっている。乾燥すると葉が捻れて螺旋状に巻き込む(c)。茎は直立し、緑色部分の長さは10〜15mだが、そこに続く褐色の部分が25〜35mmほどある(d, e)。褐色の部分は葉と仮根が混ざり合っている。
 葉は全縁で、狭い基部をもち、倒卵形で先端が急に細く伸び、長さ2〜2.5mm、一本の中肋が葉頂まで伸びている(f, g)。先端には微細な歯がある。葉縁には2〜3列の細長い細胞からなる舷がある(j)。葉身細胞は、葉頂近くでは扁平な六角形(h)、葉の中央部では長い六角形で、長さ35〜65μm、細胞膜は薄い(i)。葉の基部には翼部はなく、細胞も分化していない。
 葉の横断面をみると、中肋の表面は大きな細胞からなり、中央部に厚壁の小さな細胞がみられる。切断位置によっては、顕著なステライドが見られる。茎の断面をみると、表皮部分は厚壁の小さな細胞で、髄の部分は薄膜の大きな細胞がみられ、中心束がある(l)。
 ハリガネゴケ科には間違いなさそうだ。ハリガネ属の検索表をたどると、ハリガネゴケ Bryum capillare に落ちる。この仲間には30数種がしられているとあるが、ハリガネゴケについての記述を読むとほぼ該当する。