HOME  観察覚書:INDEX back


[標本番号:No.166   採集日:2007/03/31   採集地:群馬県、藤岡市]
[和名:オオバチョウチンゴケ   学名:Plagiomnium vesicatum]
 
2007年4月8日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
 岩清水の湧く岩壁にチョウチンゴケの仲間が群生していた(a)。多分オオバチョウチンゴケだろうとは思ったが、それにしてはあまりにも大きく厚い葉をつけたものがいくつもある(b)。そんなこともあって、念のために持ち帰って調べてみることにした。
 長く這う茎は5〜8cmほどのものが多いが、20cmを超えるものがある(c)。葉は楕円形で多くは長さ6〜8mmだが、10mmを超えるものがある(d)。オオバチョウチンゴケではなくてアツバチョウチンゴケかもしれないと思い、舷の様子と葉身細胞の大きさを検討することにした。
 ルーペで観察すると、どうやら葉縁の全周に透明で明瞭な舷があるようだ。葉身細胞は葉頂部では小さいが(e)、葉身の大部分では70〜90μmの多角形だ(g)。葉縁の舷を構成する細胞には、細くてやや短かいものもあるが(f)、大部分の舷では他の部分とは明らかに異なる細長い細胞からなる。葉の横断面を見ると、葉が大きな分だけ、中肋も太くしっかりしている(h)。

 最初に見たときに、オオバチョウチンゴケにしては、葉があまりにも大きいこと、茎が20cmにも達すること、ルーペでみた葉身細胞が非常に大きかったことなどが印象的だった。しかし、葉縁に明瞭な舷があり、葉身細胞も100μmを超えるものは少ない、などから、アツバチョウチンゴケではなく、大型に育ったオオバチョウチンゴケなのだろう。