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[標本番号:No.175   採集日:2007/04/07   採集地:栃木県、日光市]
[和名:マルバハネゴケ   学名:Plagiochila ovalifolia]
 
2007年4月15日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
 福島・栃木県境の渓谷を歩いていると、蘚類に混じってハネゴケ科の苔類がみられた(a)。多分マルバハネゴケだろうとは思ったが、念のために持ち帰った。
 渓谷の側壁部分のジメジメした岩についていた。茎は長さ2〜6cm、斜上し二つに分枝し、仮根が茎の基部にだけ着いている。葉は瓦状につき、卵形で背側の縁は回り込み、上部に小さな歯がいくつもつく(b, d, e)。腹側をみても、腹葉らしきものはなく、ごくわずかに小さな線状の組織が見られる。これは腹葉の痕跡なのだろう(c)。
 葉身細胞は30〜45μm、薄膜でトリゴンは非常に小さく平滑で、円形ないし楕円形の油体が1細胞あたり5〜12個ほどある。細胞膜の厚みやトリゴンの様子などは、顕微鏡の合焦位置を変えながら観察しないと正確には読みとれない。(f)と(g)とは、同一試料を同一倍率で、合焦位置だけを変えて撮影したものだ。
 茎の横断面を観察していると(h)、そこから出ている葉の基部が2細胞層の厚みをもったものをみつけた(j)。2細胞層になっているのは葉の基部のみで、その先は1細胞層である(i)。何枚かの葉で確認してみたが、葉の基部が2細胞層になっているものは少ない。
 観察結果は典型的なマルバハネゴケ Plagiochila ovalifolia の特徴を示している。この次出会ったときには、もはやマルバハネゴケを採集することはあるまい。