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[標本番号:No.177 採集日:2007/04/07 採集地:栃木県、日光市] [和名:コカモジゴケ 学名:Dicranum mayrii] | |||||||||||||
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栃木県と福島県境の男鹿川流域の沢沿いの斜面で、ヤマザクラの老木の腐った幹に小さな黄緑色のコケがポッコリとついていた(a)。近づいてみるとシッポゴケ科のコケのように見えた(b)。緑色の部分は5〜8mm程度で、密に茶褐色の仮根に被われた茎が厚く層をなしていた(c)。 密に葉をつけ、乾くと強く巻縮し、湿ると外曲して茎から離れる(d)。葉は長さ2.5〜4.5mm、卵形の基部をもつ線状披針形で、葉先付近は内側に溝状に凹み、葉先を除き全縁(e)。中肋が葉先にまで達し、上部の中肋背面には目立たないパピラがあり(g)、葉先の縁には歯がある(f)。 葉身細胞は、不規則な矩形から方形で、長さ10〜30μm、幅5〜8μm、厚壁で上部背面には弱いパピラがある(h, l)。翼部の細胞はよく分化し、褐色を帯び大きな薄膜の矩形(i)。葉の横断面を、翼部から徐々に上部にかけて5ヵ所ほどで切り出してみた(j)。葉縁の細胞は1層であり、中肋は平面的で、中央に顕著なガイドセルがある(k)。 シッポゴケ科までは間違いなさそうだ。外見はユミゴケに似ているが、葉の基部で中肋の幅が1/3まではなく、さらに葉先は簡単には折れない。翼細胞が明瞭に分化し、葉基部での中肋の幅からシシゴケではない。朔をつけていないので、忠実に検索表をたどるのは困難だが、どうやらシッポゴケ属に落ちるような気がする。しかし、図鑑のシッポゴケ属に掲載された種を読み進めていっても、それらしい種を見つけられない。多分ありふれた種なのだろうが、典型的な姿ではないのだろう。現在の知識・経験からはこれ以上はわからない。
[修正と補足:2007.04.25] |
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