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[標本番号:No.179 採集日:2007/04/07 採集地:栃木県、日光市] [和名:チャボシノブゴケ 学名:Pelekium versicolor] | |||||||||||||
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男鹿高原を流れる男鹿川の上流の河原の転石を薄く被うコケがあった(a)。コケマットの厚みは1〜2mm程度だが、ルーペでみると何度か羽状に分枝しているようだ(b)。ナイフで石から削ぎ取って持ち帰った。すっかり乾燥して枝は細くなったが(c)、水没させると葉が拡がった(d)。 植物体は非常に小さく、茎は細かく2〜3回羽状に分枝して、茎の表面には糸状の毛葉に被われている(e)。茎の基部周辺では仮根が密生する。茎から直接分かれる枝には毛葉があるが、そこからさらに分枝した支枝には毛葉はほとんど無い。 茎葉は長さ0.1〜0.25mm、広い三角形で先端は細長く尖る。枝葉は広卵形で葉先は鋭い(f)。いずれも中肋は先端まで届かない。葉身細胞は矩形で、長さ6〜12μm、表面には尖ったパピラが表裏ともにひとつある(g〜i)。枝葉を合焦位置を変えて撮影した(g, h)。 茎表面を覆う毛葉の多くは一細胞列だが、複数細胞列からなる毛葉もある。主枝表面を被う毛葉はほとんどが一細胞列からなる(j)。毛葉の細胞列は1〜4細胞。毛葉にも尖ったパピラがある。茎の断面を切ってみると、毛葉の様子がよく分かる(k)。 チャボシノブゴケ Thuidium sparisifolium らしい。シノブゴケ科にこのような小さなものがあることに驚いた。枝葉を外すのにも、実体鏡の下で精密ピンセットを使わないと、葉が崩れてしまい、なかなかうまくいかない。また、葉の横断面を切り出すにも、中肋を含んだ面での切り出しは結局できなかった。先が非常に細い針を使っても、葉を押さえること自体が難しい。ちょっと力が強すぎると組織ごと壊れてしまう。かろうじて切り出すことはできたが、中肋に対して直角方向ではなく、斜めの位置だった(i)。
[修正と補足:2010.03.01] |
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