HOME | 観察覚書:INDEX | back |
[標本番号:No.180 採集日:2007/04/07 採集地:栃木県、日光市] [和名:コフサゴケ 学名:Rhytidiadelphus japonicus] | |||||||||||||
|
|||||||||||||
栃木・福島県境の清流に沿った林道で採集したコケが残り二つとなった。そのうちのひとつ、河原の転石を一面に覆っていたコケを観察した。標高は1,000mほどだろうか。とても丈夫なコケで、現地で手に取ったときに、赤みを帯びた枝や茎が非常に印象的だった(b, d, e)。 黄色みを帯び、全体に光沢があり、不規則に羽状に分枝し、長いものでは12cmを超える(c)。分枝する枝は、長さ1.5〜4cm、さらにそこから短い支枝を出す。茎や枝に毛葉はない。 葉は乾いても展開したままで(d)、水没させても姿はあまり変わらず、鋭い葉先が反り返る(e)。葉先の反り返りは茎葉において特に顕著となる。茎葉は、円形に近い広卵形で、急に細くなって、先端は長く反り返っている(f)。先端部を含めて長さ2.5〜4mm。先端と葉の上部に細かい歯がある(h)。枝葉は卵形で、急に細くなって尖る(g)。茎葉ほど幅広のものは少ない。茎葉同様、先端部と葉の上部には歯がある。茎葉にも枝葉にも、中肋は2本あり、葉の中央部付近に達する。 葉身細胞は、茎葉も枝葉もほぼ同様で、長い楕円形〜うねった線形で、長さ40〜70μm、幅3〜5μm、平滑でやや厚めの膜を持つ(i, l)。翼部では、褐色を帯び、幅広の大きな細胞となっている(j)。茎葉の横断面をみたが、中肋を含んだ部分を上手く切り出せなかった(l)。茎の横断面をみると、厚壁で小さな細胞が表皮層を構成し、中心束はない(k)。 現地でみたとき、ハイゴケ科かイワダレゴケ科を疑った。持ち帰った標本にはシノブゴケ科の蘚類が混じっていた。最初にハイゴケ科の検索表をたどったが、該当属が見つからなかった。次にイワダレゴケ科の検索表をたどると、フサゴケ属に落ちた。属内の種をたどるとコフサゴケ Rhytidiadelphus japonicus が最も近い。円形に近い茎葉の形状と、赤褐色の茎枝は図鑑類の記載とピッタリだと感じた。 |
|||||||||||||