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[標本番号:No.197   採集日:2007/04/29   採集地:栃木県、日光市]
[和名:オオスギゴケ   学名:Polytrichum formosum]
 
2007年5月18日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 日光の標高1,300m付近で、樹幹基部とそこに倒れかかった枝に、大型のスギゴケの仲間がみられた(a, b)。樹幹から出るスギゴケの仲間は、先日(覚書2007.5.16)ウマスギゴケを取り扱ったが、今日観察したものも同じ属のコケらしい。
 植物体は大型で、茎の長さ8-15cm、枝分かれはない。乾燥すると葉が茎に接着する(c)。持ち帰った標本を湿らせると、直ぐに葉が基部で反転して茎から離れた(d)。葉は褐色卵型の基部から披針状に伸び、長さ8-12mm、縁には鋭い歯があり、ほとんど内曲しない(e, f)。
 葉の横断面を切り出してみた。鞘部には中肋付近にわずかに1〜2細胞の高さの薄板様の組織がある。葉身部では、5〜6細胞の高さの薄板が、葉の腹側一面に45〜65列ほど並ぶ。薄板の端細胞は、横断面では縦長の楕円形で表面は平滑(i)、縦断面でみても、端細胞はほぼ平らに並ぶ(j)。薄板を葉の腹面からみると、円形〜楕円形の細胞が連なっている(k)。茎は厚壁で小さな表皮細胞と、明瞭な中心束をもつ。

 朔をつけた個体は無かったが、オオスギゴケ Polytrichum formosum に間違いなさそうだ。図鑑類にはオオスギゴケは、半日陰地の腐植土上に発生する、とかかれたものが多いが、先日観察したウマスギゴケと同様、樹幹基部からも出ていた(覚書2007.5.16)。