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[標本番号:No.209 採集日:2007/04/29 採集地:栃木県、日光市] [和名:オオシッポゴケ 学名:Dicranum nipponense] | |||||||||||||||||||
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先月末の日光では、標高1,400m付近で何種ものシッポゴケ科のコケにであった。今日取りあげたのも、それらのうちのひとつ(a)。残念ながら環境の分かる生態写真などは撮影しなかった。 カラマツ林樹下、やや日陰の腐葉土から根元の樹幹などに群生していた。茎は高さ3〜6cm、下部は褐色の仮根が密につく。湿っていても(b)、乾いていても(c)、あまり姿は変わらず、乾燥すると、葉が一方向に向いたり、やや茎に接し気味になる。 葉は、長さ6〜9mm、基部が最も広く、広めの披針形で、先の方から2/5ほどまで縁に牙歯があり、葉先は鋭く尖ることはない(d, e)。中肋が葉頂まで達し、中肋の背面には2〜3列に鋭い歯が並ぶ(f, g)。中肋の歯は葉身の1/2〜2/3あたりまで見られる。 葉身細胞は、葉頂付近では菱形〜長矩形で30〜50×12〜15μm(h)、葉の中程から基部では長菱形〜長楕円形で、70〜90×15〜20μm(i)、70〜120×12〜20μm(j)で、厚い膜を持ち、膜にはくびれがある。翼部は褐色の大きな細胞が、1細胞層の厚みで連なり、膜は薄い(k)。 葉の横断面を基部〜頂部までの数ヶ所で切り出してみた(l)。中肋の中心部には顕著なガイドセルがあり、ステライドはほとんどないかあっても目立たない。葉の中部から先では中肋背面に2〜3個の突起がみられる。茎の表皮細胞は薄膜小形で、弱い中心束がある(m)。 標本の中に、朔をつけた個体が2つほど含まれていた(b)。朔柄の基部を包む苞葉は、長い筒状になっていて、長さ150〜200μmに及ぶ非常に長い葉身細胞からなり、縁には舷のような構造をもっている(n)。先端付近は不規則な形で厚膜の小さな細胞からなる。 朔は細長く、朔歯は一列で朔歯は16本あり、基部まで二裂し、口環はみられない(o, p)。朔柄の表皮は厚壁の小さな細胞からなる(q)。採取した標本では、既にほとんどの胞子が放出されて、朔そのものもかなり乾燥していた。朔の壁は外側に厚壁の細胞、内側に薄膜の大きな細胞からできている(q)。球形の胞子は径が18〜25μmほどある(r)。
時間がとれたので、今朝は写真を36枚も使った。それぞれ別個に並べると6段になってしまうので、4枚を寄せ集めたり、部分を貼り付けたりして全体の枚数を減らした。 |
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