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[標本番号:No.254   採集日:2007/05/08   採集地:東京都、大田区]
[和名:ホンモンジゴケ   学名:Scopelophila cataractae]
 
2007年6月10日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 今月2日、岡山コケの会の撮影会で日光に行った折りに、神社でホンモンジゴケにであった。和名のホンモンジは東京池上の日蓮宗総本山の本門寺に因むものゆえ、本家本元の本門寺では現在どういう状況になっているのか、現地に出向いて確認してみた。
 本門寺はかつてホンモンジゴケが発見された時とは、境内の様子がすっかり変わってしまっているようだ。寺院領域の全体が綺麗に掃き清められ玉砂利が敷かれコケの生える余地はほとんど無くなっている(a, b)。銅葺屋根の建造物も少なくなり、わずかに残った庫裡の屋根の下では、コケなど生える余地はない。墓地にはコケのマットがみられるが、それらは、アオギヌゴケ科だったり、ギンゴケだったりして、ホンモンジゴケではなかった。
 歩き回ってみると、池上駅から最初にであう銅葺屋根の小さな門(c)、大堂左側に位置する古い銅葺屋根の庫裡脇の生け垣に(d)、かろうじて棲息していた(e, f)。霧吹きで濡らすと巻縮していた葉が開きだした(g)。境内の掃除をする折りに、コケは邪魔者扱いされてむしり取られて捨てられていた。その塊をひとつ拾って帰ってきた。
 茎の背丈は低く、高さ0.8〜1.2cmほどしかない。葉は長さ1.5〜1.8mmの楕円状披針形で、中肋が先端までのびている(h)。葉縁は全縁で、葉身細胞は六角形〜矩形で、長さ8〜10μm、葉縁の細胞は特に分化していない(i)。翼部分では大きな矩形の葉身細胞からなる(j)。葉の横断面を見ると、中肋が背側に突出し、背側にのみステライドがあり、大きなガイドセルが目立つ(k)。茎の断面には中心束はない(l)。ホンモンジゴケ Scopelophila cataractae としてよさそうだ。

 池上の本門寺では、多分ホンモンジゴケだろうと思われるこけを何度か見ているが、採取することができないので、正確に確認することはできなかった。今回は、はからずも小さな塊状で捨てられていたものがあった。今ではコケの棲息できる環境は随分悪化している。