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[標本番号:No.258   採集日:2007/06/09   採集地:栃木県、日光市]
[和名:チャツボミゴケ   学名:Jungermannia vulcanicola]
 
2007年6月14日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 今月9日に奥日光の湯本温泉で泉源に寄った(a)。硫黄混じりの暖かい流れの中に、何種類かのコケが出ていた。建物の礎石の部分は、温泉の吹き出し口を囲み、時には熱い湯を浴びる。そんな場所に黄緑色の厚いマット状に苔類がついていた(b, c)。
 群の表面、つまり茎の先端には花被やら苞葉のようなものがあるように感じるのだが、「花被」の概念が実感として分かっていないので、どの部分がそれにあたるのかよくわからない(d)。
 茎は柔らかく、長さ3〜5cm、不規則に枝を出し斜上し、仮根は基部以外には少ない(e)。これらが集まって、群として丸みを帯びた形をなしている。葉は茎を抱くように瓦状に接在状態で並び、腹片や腹葉はない。葉の両列は相互に90〜120度程度に開く(f〜h)。葉は丸みを帯び、全縁、背側の縁は巻き込み、茎とは長い線で繋がり、基部は茎に沿って流れる(h, i)。
 葉身細胞は全体に大きく薄膜で、トリゴンはみられず、表面は平滑で、多角形〜矩形で、葉の位置によって大きさにはかなり幅がある。葉身細胞を葉の3ヵ所の位置で並べてみた(j〜l)。辺縁部では葉緑体を多く含むが油体は少なく、中央部では葉緑体が少なく各々の細胞には油体が1〜4つみられる。油体は紡錘形〜楕円形で、中心に眼点細胞の様なものがみられる(j)。茎の断面はほとんど分化もなく、非常に単純な構造をしている。

 硫黄泉の流水中や、その周辺にみられることから、種がしぼりやすかった。観察結果はツボミゴケ属のチャツボミゴケ Jungermannia vulcanicola を示唆している。図鑑の説明を読むと、「ペルギニューム」という用語がでてくる。これまでも何度か用語集で「ペルギニューム」を調べてはみたが、具体的にどういう状態なのか、今ひとつ理解できない。