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[標本番号:No.275 採集日:2007/06/24 採集地:山梨県、鳴沢村] [和名:ムツデチョウチンゴケ 学名:Pseudobryum speciosum] | |||||||||||||
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富士山の標高1,200m付近は、針葉樹林が一面に広がり、林床は何となくジメジメして暗い所が多い(a)。その腐植土上には、しばしば大型で綺麗なコケが群生している(b)。葉の波打ったカサゴケモドキのような印象のコケが群生していた(b)。 光沢のある大型のコケでとても美しい。直立する茎は、長さ6〜10cm、波打った大きな葉をつけ、柄は硬くてしっかりしている(c, d)。葉は長さ0.8〜1.2cm、長楕円形で波打って横縞をもったように見え、太い中肋が葉頂にまで達し、縁には長い刺を持っている(e〜g)。葉縁の歯は単細胞で(i)、中肋は羽状に枝を出している。また、葉身細胞が、葉頂を中心とした同心円上に並ぶように斜めに配列しているため、独特の縞模様をみせてくれる。 葉身細胞は長多角形〜長菱形で、長さ90〜120μm、幅10〜15μm、壁が厚く、随所にくびれがある。葉基部では長さ25〜60μmの多角形となり、やはり厚い壁にはくびれがある(h)。中肋にステライドはなく、背腹の表皮は大型で薄い細胞が並ぶ(j)。葉が大きいので、横断面の切り出しはかえって難しい。茎の横断面をみると、明瞭に4層から構成されている(k, l)。なお、乾燥しても、葉は軽く縮むていどで、強い巻縮はおこらない。 詳細に観察するまでもなく、ムツデチョウチンゴケ Pseudobryum speciosum であることは明らかのようだ。古い図鑑には、カシワバチョウチンゴケの名で掲載され、日本固有種とされていたことが記されている。富士山では、標高1,200〜1,750mの何ヶ所にも分布していた。 |
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