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[標本番号:No.272   採集日:2007/06/24   採集地:山梨県、鳴沢村]
[和名:カラヤスデゴケ   学名:Frullania muscicola]
 
2007年7月3日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 富士山の標高1,700m地点で針葉樹の樹幹に、紫褐色と緑色の苔類がやけに目立った。そのうちの紫褐色の苔を観察した。たぶん以前に観察したことのあるカラヤスデゴケではないかと思ったが、現地でルーペでみただけでは自信がもてなかった。
 カラヤスデゴケであれば、以前緑色のタイプ(標本No.9)、紫褐色のタイプ(同No.181)の両者を観察しているが、現地でみた限り、それらとよく似ているように感じた。以前観察したものは、いずれも標高1,000m以下の樹幹に着いていたものだが、これは、高地の樹幹に着いていた。
 植物体は不規則に羽状に分枝して、長さ2〜5cm、幅は葉を含めて1mm前後(c)。葉は倒瓦状に重なり、ヘルメット状の腹片と、2裂した複葉をもつ(d〜f)。腹片の一部には舌状となったものがある。背片と腹片、複葉をバラしてみた(g〜j)。
 葉身細胞の大きさは、位置によってかなり幅があり、図鑑にあるように15〜25μmもあれば、多くが25〜35μm、あるいは35〜45μmが主の部分もある(k)。どの部分も、膜は薄いがトリゴンは大きい。細胞内部には、紡錘形の油体が4〜10個あり、油体内部には小粒がある。花被は倒卵形で、先端が細い筒状となり、何本かの稜がみられる(l)。

 カラヤスデゴケ Frullania muscicola でよさそうだ。図鑑などには、カラヤスデゴケは「常緑樹林や落葉樹林の樹幹や枝に着生する」とある。この苔は、高地のシラビソ樹幹に着生していたものだ。雄花や雌花は確認できなかった。