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[標本番号:No.274   採集日:2007/06/24   採集地:山梨県、鳴沢村]
[和名:キヒシャクゴケ   学名:Scapania bolanderi]
 
2007年7月5日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
 富士山の標高1,700m地点で、針葉樹の倒木についていた苔類を観察した(a, b)。茎は長さ3〜8cm、基部で枝分かれし、斜上したり立ち上がる(b, c)。背片は小さく、腹片の2/3〜3/5ほどの大きさで、倒瓦状につく。背片、腹片ともに、卵形で、縁には歯がある(d〜f)。腹葉はない。背側(d)、腹側(e)の画像を並べた。葉を背腹そろった状態ではずしたが(f)、カバーグラスを載せると、たちまち小さな背片が破れた(g, h)。葉腋には多数の糸状の毛葉がある。葉身細胞は、丸みを帯びた多角形で、長さ10〜20μm、トリゴンはやや大きい(i, j)。花被は扁平(d)。

 背片が腹片より小さく、腹葉がないことから、ヒシャクゴケ属の苔類らしい。キヒシャクゴケとオオヒシャクゴケが候補に上るが、葉腋に多数の毛葉があり、背片基部の茎への流下が小さいことなどから、キヒシャクゴケ Scapania bolanderi だろう。

 蘚類では科や属にたどりつくまでが大変だが、いったん属までたどりつければ、比較的楽に種名に到ることができるという。一方、苔類では属までは比較的簡単にたどりつけるものの、その先が面倒で種名にたどりつくのが意外と大変だという。