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[標本番号:No.223 採集日:2007/05/04 採集地:栃木県、那須塩原市] [和名:イワイトゴケ 学名:Haplohymenium triste] | |||||||||||||
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ゴールデンウイークに採集した最後のコケをようやく観察することができた。塩原温泉の標高600m地点、沢沿いのカンバの樹幹に、細紐を絡ませて貼り付けたような状態で、薄いマットを作っていた。乾燥していたせいか、全くツヤがなかった。 茎は不規則に分枝し、長いものでは7〜8cmあり、3〜25mmほどの長さの支枝を出している。乾燥状態で支枝の太さは、葉を含めて0.3〜0.4mm、葉が茎に鱗状に密着する(b, d)。湿らすと、葉が枝から直角に開き、枝の幅も1.0〜1.2mmほどとなる(c, e)。茎にも枝にも毛葉はない(f)。 採取した標本では、主茎の葉は形が崩れ、大きさにはかなり変異があり、多くは枝葉と同じような形だが、先端が長く伸びたものが多い。枝葉は、長さ0.5〜0.8mm、卵形の基部にやや細い舌状の先端をつけたような姿で、ほぼ円頭、中肋が葉長の1/2あたりまで伸び、葉縁は全縁であるが、葉身細胞のパピラのため、微歯があるかのように見える(g, h)。 葉身細胞は、六角形〜円形で、長径7〜12μm、表面に4〜6つのパピラがあり(i, j)、基部の中肋付近では、長さ12〜18μmほどの楕円形となって、パピラはない(j)。枝葉の横断面をみると、パピラは葉の背側に多く、葉縁では細胞を取り巻くようにパピラがみられる(k)。茎と枝の横断面をみると、表皮は厚壁の小さな細胞からなり、中心束はみられない(l)。
全体が不規則に分枝した糸状で、1本の中肋が葉の中程に達し、葉身細胞にパピラがあり、乾燥すると葉が茎や枝に密着することなどから、イワイトゴケ属ないしキヌイトゴケ属だろうと見当をつけた。キヌイトゴケ属にしては、中肋が短く、枝葉の形も違和感がある。また、枝葉の基部の下延の形式が、キヌイトゴケ属の説明とそぐわない。 |
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