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[標本番号:No.231 採集日:2007/05/08 採集地:栃木県、日光市] [和名:エゾノコブゴケ 学名:Onchophorus wahlenbergii] | |||||||||||||
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日光の裏見の滝近くの沢沿いの道脇に、朔を豊富につけたシッポゴケ科の蘚が群生していた(a, b)。朔の大きさや形に何種類かあるので変だと思って、持ち帰った標本をより分けてみると、大きな朔はチョウチンゴケ科のものだった。 茎は高さ2〜3cm、茎の下半分は茶褐色の仮根に被われている。乾燥すると葉が巻縮するが(c, e)、湿らすとすぐに伸びて、反り返るように茎から離れて広がる(d, f)。葉は、透明で五画形〜台形の透明な翼部から、急に細くなって線形に伸び、長さ3〜5mm、中肋が葉頂に達する(g)。線形の部分は、樋のように丸みを帯び、葉先には小さな歯がある(g, i, j)。 葉身細胞は丸みのある方形〜矩形で、葉身部の多くでは長さ6〜15μm、基部の非透明な部分では20〜40μmで平滑(h)。翼部の細胞は長い矩形で、長さ80〜100μm、幅8〜20μmであり、葉先では長楕円形で長さ10〜15μmとなっている(i)。 葉の横断面をみると、顕著なガイドラインとステライドがみられる(j, k)。葉の線形部分では、葉縁の細胞は2層からなっている部分もある(j)。茎の横断面をみると、中心束はあまり発達していない。茎の表皮細胞は小さく、厚壁のものやら薄壁のものが混在している(l)。 |
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朔の基部をみると特徴的なコブがある(m)。朔歯は披針形で16枚あり(n)、先端が2裂し(o)、微細な乳頭があり、縦斜めの細条線がみられる(p)。朔と朔柄の横断面を切りだしてみた(q)。朔柄の構造は比較的単純である。朔のコブの部分は内部の様子も、その上部とは異なる(r)。 葉の形と、朔の基部下側に明瞭なコブがあることから、コブゴケ属 Onchophorus だろう。コブゴケ属の検索表をみるまでもなく、エゾノコブゴケ Onchophorus wahlenbergii としてよさそうだ。保育社の図鑑には、「葉身は1細胞層」と記されるが、細い線形部分の葉縁には、部分的に2細胞層の部分がある。朔が着いていたので、比較的簡単にコブゴケ属にたどり着いたが、朔が着いていなければ、ススキゴケ属なども考慮してかなり迷っていた可能性がある。 |
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