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[標本番号:No.283 採集日:2007/07/07 採集地:栃木県、日光市] [和名:ヒメミズゴケ 学名:Sphagnum fimbriatum] | |||||||||||||
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奥日光の標高1500m、硫黄泉の源泉周辺には小湿地が広がっている(a)。水温50〜65度の湯が流れ込む場所に、ミズゴケの仲間が群生していた(b, c)。暖かい湯の中で朔をつけた個体もある(d)。現地で白い紙の上に何本かの茎を並べてみた(e)。乾燥した状態で茎の長さを分かるよう脇に物差しを置いた(g)。多くの茎は長さ8〜12cmほどあり、茎の上部では4〜5本の枝が、中部から下部では3本の枝が束になってつく。 |
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茎の表皮細胞には螺旋状の肥厚はみられない(g)。茎葉はほぼ平坦で舌形〜扇状に広がり、先端が広くささくれる(h)。ささくれは側面まで広がり、葉縁には基部から中程まで数細胞列からなる舷がみられる(i)。茎葉の長さは1mm前後。 枝葉は卵形で、長さ1〜1.2mm、先端は尖り、中央部は凹状となり、乾燥しても葉縁が波打つことはない。枝葉の腹側の細胞には孔がなく(k, l)、背側の細胞には中型の孔が、1細胞あたり3〜5つみられる(m, n)。葉先付近の写真(k, m)は背腹の間違いを防ぐために撮影した。 枝葉の横断面を切りだした(o)。凹んでいる側が腹側で、写真(o)では右上が腹側、左下が背側となる。葉緑細胞は腹側にも背側にも開いており、横断面でほぼ台形〜卵形で、底辺は腹側にある。底辺が腹側にあるのか背側にあるのかの判定は、かなり微妙で、全く別の個体の別の位置の枝葉を含め、何枚もの横断面を確認する必要があった。 運良く朔をつけた個体に出会うことができたので、とりあえず、丸い蓋を被った朔(p)と、胞子をほとんど放出したらしい朔(q)をルーペで見た状態を載せておくことにした。胞子体そのものの観察は、また別の機会に行いたいと思う。たまたま、薄膜状のカリプトラを確認できたので、この写真だけを載せておこう。なお、(r)は小枝の横断面である。
ミズゴケの分類は難しいとされる。初心者のうちは手を出さないのが無難なのだろうが、そうもいかない。無謀を覚悟で種名の同定を試みた。まずは、節の判定である。 節まで落とせば気が楽になる。節以下の検索表にあたると、茎葉が舌状〜扇状 であるから、さらに絞られる。茎葉の透明細胞は側壁しか残っていないから、種の候補はかなり絞られる。茎葉の形、舷の様子から残るのはヒメミズゴケ Sphagnum fimbriatum となる。 余談だが、ミズゴケ類の同定作業は実体鏡下での解剖作業に終始する。先端の細いピンセットを2本使って、茎や枝から形を壊さず葉を取り外す作業など、手際よくやるにはかなりの慣れが必要そうだ。さらに、枝と枝葉の薄切りは、思いの外面倒だ。葉の横断面切り出しの楽なスギゴケ科、チョウチンゴケ科、ホウオウゴケ科などとはあまりにも対照的だ。 |
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