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[標本番号:No.253 採集日:2007/06/07 採集地:埼玉県、蕨市] [和名:ユミダイゴケ 学名:Trematodon longicollis] | ||||||||||||||||
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埼玉県蕨市にある和楽備神社の境内、小さな社の南側の泥の上に、芝生を一面に敷き詰めたように、朔をつけたコケが密生してた(b, c)。こけ本体の背丈は4〜6mm、朔は柄を含めて長さ8〜10mm(d)。採集した標本は雨で汚れたのか、ほとんどの葉が泥だらけだった(e)。 葉は広卵形の基部から、細い披針形に伸び、長さ3〜4mm、中肋が葉頂に達し全縁(f, g)。葉身細胞は矩形、葉の中部では長さ10〜35μm、幅8〜12μm(h)、葉上部の縁では2細胞層だが(n)、葉の鞘部から下部では縁も1細胞層(l, m)。中肋にステライドはない。 朔柄は黄色で8〜12mm、朔は細い円筒形で、頚を含めた長さは3〜6mm、全体が弓形に曲がる(i〜k)。僧帽形の帽と長い嘴のある蓋を持つ(j)。朔の表面には多くの気孔がある(o)。朔歯は1重で、基部まで2裂し、表面には縦条があり、先端付近は微疣に被われる(p)。 尖った蓋と長い首をもった朔があることから、ナガダイゴケ属 Trematodon であることはすぐにわかった。朔の頚は壺部分の倍以上の長さをもち、朔歯の上部に微疣が多数あることから、ユミダイゴケ Trematodon longicollis として間違いなさそうだ。それにしても、胞子体がついていなかったら、はたして種の特定までたどり着けるのだろうか。また、蘚苔類で、組織の表面に気孔をもった種をみたのは初めてだった。 |
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