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[標本番号:No.269   採集日:2007/06/24   採集地:山梨県、鳴沢村]
[和名:オオスギゴケ   学名:Polytrichum formosum]
 
2007年7月20日(金)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 昨日に続いてスギゴケ科の蘚類を観察した。先月富士山の標高1,400m付近の針葉樹林の林床に群生していたものだ(a, b)。乾燥状態では葉が茎に密着する(b)。一見したところ、ウマスギゴケかオオスギゴケのようにみえる。証拠標本として少量持ち帰っていたものだ。
 茎は背丈8〜12cmで分枝はせず、茎の頂きに胞子体をつけ、4〜6cmの朔柄をつけていた。葉は卵形の鞘部をもった披針形で、長さ8〜10mm、先端は細く尖り、葉の上半部の縁と中肋背面には鋭い歯がある(c, d)。
 葉身細胞は、長さ8〜12μmの方形や多角形だが(e)、鞘部では長い六角形〜矩形で、長さ40〜90μm、幅5〜10μm(f)。葉の横断面を切り出してみると、薄板は4〜6細胞の高さがあり、端細胞は縦形の楕円形(g)。葉の腹面側から薄板を見ると、表面は平滑である(i)。翼部の横断面を茎を含めて切ってみた(h)。この部分には薄板はない。
 次に薄板をバラバラにしてみた(j)。これらを観察すると、縦断面での薄板の様子がよくわかる。端細胞列は全辺で凸凹は少ない(k)。朔には4つの稜があり、基部には浅いくびれがある。朔自体ほとんどが未成熟だったので、朔歯や胞子などは観察しなかった。

 観察結果から、ウマスギゴケではなくオオスギゴケ Polytrichum formosum としてよさそうだ。野外で、ウマスギゴケとオオスギゴケを区別するには、朔の基部をみるなり、ルーペで薄板表面の様子を観察するしかないのだろうか。